短篇 | ナノ



年賀状って25日までに出した方がいいらしいけどぶっちゃけ25日まではクリスマスの方でみんな忙しいから年賀状とか書いてる暇無くね?



「晋助年賀状出した?」

「あ?」

「出さないか」

唐突な問いに高杉が疑問符を投げると、隣で寝そべっている杞都は少しだけ諦めたように小さく溜め息を吐いた。

「テメーは出したのか?」

杞都がつまらなそうにしているのを見、高杉が紫煙を吐くついでに訊ねる。
それを受けた杞都はんー、と唸って緩く頭を掻いた。

「銀時、ヅラ、辰馬、」

一人一人指を折って順に名前を上げていく杞都。
聞き慣れた名前に思わず苦笑が漏れる。

「あ、あとエリザベス」

「…アレにも出したのか」

律儀なのか暇なのか…
高杉がなんとも言い難い表情で杞都を見ると、出した本人である彼女も似たような顔をしていた。

「イヤ、だって一応ヅラの友達?だし…」

「…そうかい」

何故疑問形なのかは敢えて訊かない事にした高杉は、後はー、と言う杞都の声に耳を傾ける。

「また子、万斉、武市、」

身近な、というより同じ船で生活する者にも出していたらしい杞都に、高杉は小さく笑みを溢した。
律儀で、細やかな気配りが無意識に出来るところは幼い頃から変わっていない。

「晋助にも出した」

「テメーも変わらねーな」

楽しそうに苦笑する高杉に、杞都はへらりと笑ってみせる。

「鬼兵隊の人とは大概一緒に居るけど、来年もよろしくしたいし」

勿論晋助ともね、とクスクス笑う杞都に高杉もクツクツと笑みを返す。

「言うじゃねーか」

「んー…あ、あと、今回はなんと全部手書きなんだよ」

ピッと指を立てて何処か楽しそうに言う杞都。
しかし高杉は僅かに首を傾げて杞都を見た。

「前からそうだったろうが」

「イヤ、うんまぁそうなんだけども」

それだけじゃないんだよ、という杞都の台詞に、高杉は黙って視線で続きを促す。

「なんと、みんなにウサギの耳をつけてみた」

「…あ?」

遂に頭が沸いたのかとでも言いた気な高杉の視線も気にせず、杞都は詳細を話し出した。

「晋助、銀時、ヅラ、辰馬には、四人で耳つけてるの描いた」

「……」

杞都の唐突且つ意図不明な台詞に高杉は思わず黙り込んだ。
後ろにちっさく私も居るけど、と言う杞都の言葉も半分程度しか届いていない。

「また子、万斉、武市には晋助入れた四人で耳つけてみた」

結構楽しくてさコレが、我ながらいいアイディアだ
そう言ってうんうんと頷く杞都を暫し見つめ、高杉は深い溜め息とともに言葉を吐き出した。

「…何やってんだ、テメーは」

完全に呆れ顔で言う高杉に、杞都はぱちぱちと数回瞬きをする。

「イヤ、だって出す人数そんな居ないし時間あったんだもの」

「…誰に許可得た」

「勿論無許可」

さらりと即答する杞都に高杉は更に呆れた表情を浮かべる。

「仲良く描けたから許して」

クスクスと笑って首を傾げる杞都。
その無邪気な様子に高杉も溜め息を吐いて諦めた。

「勝手にしろや」

そう言って立ち上がり自室に戻ろうとすると、着物の裾を小さく引かれる感覚。
何かと思いそちらを見ると、杞都が起き上がって着物の裾を握っていた。

「何だ?」

立ったまま訊ねると杞都はするりと手を離し、高杉を見上げて微笑んだ。

「来年も、晋助の傍にいさせてくれる?」

精一杯笑っているのだろうが、その笑顔は寂しそうで、置いていかれないか不安で仕方無いと言っているようなものだった。

その表情に、高杉は心中で溜め息を溢す。
杞都はごく偶に、こういう顔をする。
高杉が自分から杞都を手離す事など無いというのに。

「何怯えてやがる」

高杉は敢えて鼻で笑い飛ばし、ゆっくりとしゃがんで杞都の後頭部に手を回し抱き寄せた。

「傍にいろや、ずっとな」

そのまま耳元で囁くと、杞都はゆっくりと顔を上げ、嬉しそうに笑った。

「晋助大好きー」

「知ってらァ」

高杉の首に腕を回してじゃれつく様に抱きつく杞都。

そんな杞都の髪を慈しむ様に撫で、クツクツと満足そうに笑う高杉。



ずーっとこうしていられたら…
心中でそっと、同じことを呟いた。







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