×長編 | ナノ
「本当人騒がせ」
呆れた、と言わんばかりに盛大に溜息を付いた。 隣の男もその意図に気付いたのか、全くだ、なんて。 珍しく意見合うじゃん。
「て言うかさー」 「あー」 「すっごい見せ付けるよなぁ、あの二人」 「本人等に自覚はねぇと思う」 「うん、分かってるー」
気だるげに交わす言葉の中で、でもあの二人をどこかほっとしたような感情で見ているのは強ちハズレではないと思う。 机一つ挟んでにこにこと話す御幸と名前の姿は少し遠いはずのここからも輝いて見える。 ほっとしたし、安心した。 それが本心だ。
頬杖を付いていた手を逆にして、私はパックのジュースを飲むのも気だるげ。 女捨ててんなよ、なんて隣で倉持が笑いながら言ってるけど無視した。 視線は相変わらず無自覚にラブラブっぷりを発揮している二人へと向いていた。 いいなぁ、とは思う。
「倉持」 「んだよ」 「あんな風にさ、」 「あ?」 「あんな風に私も誰かを好きになるのかな」 「……」 「んでそれで不安になったり……泣いたりするのかな」 「知らねぇよ」
吐き捨てるようにして倉持が席を立った、と、すぐに御幸と名前の方へ向かってることに気付く。 ああ、きっと蹴るな。 そう思った瞬間に御幸の机を予想通り蹴り飛ばしたもんだから私はお腹を抱えて笑い出しそうになった。 さすがに一人だったのでそれは止めておいたけど。 想像しやすい奴、なんて呟いた心中が穏やかなものであったことに、私はまだ気付かないでいる。
「マミー!御幸と倉持と四人でご飯食べよー!」
にこやかに手を振る名前の横。 保健委員として成し遂げた証拠が四隅をしっかり画鋲で固定されて存在していた。
『手、繋げますか?』
繋げるでしょ、二人なら。
missing end...*
20080827/成瀬
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