×長編 | ナノ
LHRが始まって、担任が教室のドアを開けて中に入ってきた。 同時に騒がしかった室内に少し、納まる。 席に各自着いたところで日直の合図が入る。
きりーつ、礼。 ちゃくせーき。
俺の視線は、無意識にも唯一無人の席へと向いていた。 担任のチョークを鳴らす音がする。 諦めて『LHR、委員会決め、席替え』と書かれた黒板へと顔を向けた。 席替えもかよ。 とことんツイてねぇのな、あいつ。
「御幸ー、くじ」 「ん?おー」
ぼうっとしていた所に声を掛けられる。 咄嗟に適当な返事をしてみたものの、何となく不思議な気分になって、目の前に立っている声の主を見上げた。
「何、くじ係りとか。お前そんなキャラだっけ?」 「うわ何コイツうるさ!ボーっとしてたくせに!さっさとくじ引け」 「そういうお前もどーせ寝てたからくじ係押し付けられたんだろ」 「うるさい上に性格悪いとか男としてサイアク」 「そりゃどーも」
褒めてないし!半ば乱暴にくじの袋を差し出してきたマミを俺は笑う。 あいつの、友人だ。 あいつが倉持や他の野球部員と知り合いになったと同じように俺も一年の時は違うクラスだったこいつと知り合うことになった。 二年になって同じクラスだって分かった時は、倉持や俺、マミや、……あいつと笑ったような記憶がほんの微かだけど残ってる。 もう、出来るなら忘れたいものだ。
「何番?」 「別に何番でも良いだろ」 「くじ係りには人の番号を知れるというメリットがあるから」 「んだよそれ。かなりゴーイン」 「うるさい。何番?」 「あー、二十三番」
取り出した四つ折の小さな紙を開いて目に入った数字を即座に口にした。 マミが何かを考えながらも、そう。とだけ返して、俺の横を通り過ぎた。
黒板に書かれた席の図と自分の番号を照らし合わせる。
お、窓側じゃん。 と同時に、気付く。 今度座ることになった新しい席が、今無人であること。
「くじ出回ったかー」
一区切り付いたと思ったのか担任が再び声を張り上げた。 何も異論がないことから判断した担任が即座に次の話題へと切り替えた。 席は帰りのHR後に移動させろ、という命令を最後に、多分学年一遅いであろう委員会決めが始まった。
休んでるあいつはどうすんのかな。
それだけが気がかりで、自分がどの委員会に入るかなんて正直、どうでも良かった。
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