×長編 | ナノ
「何お前、降谷と付き合ってんの?」
心外だと言わんばかりに御幸を睨みつけた。この場合侵害か?いや、どうでもいい。それにしてもこの男の頭はとうとう沸いてしまったのか。どこをどう見たら付き合ってるように見える。
「や、最近お前と降谷が一緒にいるところ見たし」 「へー」 「倉持なんかそれをネタに降谷苛めてんだけど」 「それは倉持が悪い」
付き合ってないよ。なんだかなぁ。そう見られていたのか。そして降谷はそんな被害にあってたのか。苦笑が零れた。
「たまたま偶然に話したことがあって、それで友達になっただけ」 「ほー」 「そこにバラ色の事情はない、悪いねぇ、お兄さん」 「ほー」 「同じ返事ってすごいムカつくんだけど何故?」
悪い悪い、と調子付いたように御幸は笑った。椅子の背もたれに寄りかかるようにこっちを見ては、何かを考えているようだ。昼休みで特になんもすることがないから話し相手になってたけどそろそろ眠りたい。次は……ああ、ヤクザの数学だ。どんだけこの学校数学多いんだよ。と週三回の数学の時間割を見てゲンナリする。多くはない、と言われそうだが数学嫌いのわたしからしたら三回も一回も同じくらいげんなり、だ。逆に英語とか、将来役立ちそうな時間を増やせばいいのに。
「ところでお前はそう思ってるがあいつはどうだろうな」 「は?」
寝る体勢になってから色々と邪魔されることが多くなったように思える。そう言えばあの日以来旺盛だった野球部の話題をあんまり聞かないな。人の噂もなんたら、か。次の試合がまた終わったら、話題が復活するんだろうけど。
「ねぇ野球部次いつ試合」 「お前話聞いてた?」 「え、何の話だっけ」 「……試合じゃねーけど練習試合なら一週間後だよ」 「へー」 「応援来てくれんの?」 「気分による」 「はっはっは、お前来たら降谷も喜ぶんじゃねえの」 「何で?」 「……」
太陽の光で御幸の眼鏡が綺麗に光った。狙ってんのか。
「鈍い奴」
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