2、孤独

本当なら毎日だって触れていたい。
一緒にいられるだけでいいなんて、そんなのは寂しさを知らない人間が言う言葉だ。


僕はネズミに触れていたい。
そして出来るなら、ネズミからも触れて欲しい。
僕を貪欲に欲しがって構わない。
自分の体に触れるのと同じように、僕に触れていいのに。


「あんた、あの女の子はあっさり断ったくせに、意外だな」


さっさと寝台で丸くなったネズミの横に腰掛けると、綺麗な、酷く冷たい声が浴びせられた。

「そんなにしたけりゃ、一人でやれよ。向こうでな!」

「違うよネズミ」

僕は口ごもる。

ただ性欲を発散したい訳じゃない。相手が誰だっていいんじゃない。
ネズミだから、したいんだ。ネズミの体を思いながら一人でしたって、意味がない。虚しさが残るだけだ。

どんなに言葉を尽くしても、伝わらないだろう。ネズミは僕の言葉を理解しないから。

「ネズミ、」

「うるさいな、聞こえなかったのかよ」

毛布を払うようにして寝返りを打ったネズミに、僕は覆いかぶさるようにしてキスをした。
すぐに顔を背けられたから、開いた首筋に唇を移す。ネズミの肩が、びくりと震えた。

「あんた、」

ネズミは強く息を吐くと、灰色の瞳で僕を見据えた。
僕の愛して止まない、強い意志を持った目だ。

「いい加減にしろ。俺はその気がない」

「解った」

僕が寝台から降りると、ネズミは毛布をぎゅっと被って、さっきよりも肩を丸めてしまった。
完全な拒絶だった。

僕のことを散々なじるくせに。
僕のことを敵視するくせに。
僕を部屋に置き続ける。


そして、あの強い瞳のまま、時折、体を許すから、こんな風に拒絶されてしまった夜には、僕は孤独で立ち尽くしてしまう。

ネズミの内側へ、僕は入っていたかった。

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