沖田総悟はいったいどんな人物なんだろうと、少し怪しみながらあとを追って局長室を出たら、早々に雌豚とか言われた。コイツ絶対腹ん中真っ黒だ。真っ黒くろすけだ。

と、いうことで私は今、両手をポケットに突っ込んだまま、案内してくれている沖田総悟の3mほど後ろを歩いている。絶賛警戒モードだ。

「……で、ここが食堂。カウンターの奥に女中専用の風呂場と女子トイレがありまさァ。女子トイレは屯所の中じゃここしかねェけど、カウンターから向こうは男子禁制なんでね。まァ安心して使いなせェ」

「そりゃどうも。」

そんな沖田総悟も、局長室からずっと、こちらに一瞥もせず、私に背中を向けたまま、たまに立ち止まったてけだるそうに説明していく。

「んで、こっちが医務室。」
「ほう。」

「ここが野郎共の風呂場。入浴は一応17時以降だが、稀に昼間入るヤツもいるんでね。清掃のときは札をかけとくことをお奨めしまさァ」
「そうします」

「ここの廊下をずっと行けば道場に繋がってまさァ。んで、お前さんの部屋なんだが、」

ぴたり、と足を止めて、ふいにこちらに振り返ったので、反射的に立ち止まってファイティングポーズをとる。

「……なにやってるんでィ。」
「防衛本能に従ってます。」

はァ?と白い目を向けられた。私はお前を危険人物として認識しているんだ、これ以上近付くなよ、と目で訴えると、今度は溜め息を吐かれた。

「安心しなせェ。別にとって喰おうなんざ思ってねェやい。」
「……半径3m以内に入ってこないでください。」

一歩近付いた彼を牽制するように、腰を低くして威嚇する。

「……そんな顔されちゃ男はそそられるってもんでィ」
「さっきと言ってること違う!」

だーかーらー、と頭をガシガシとかいて、ドスドスと距離を詰める沖田総悟。慌てて後ずさるも、あっという間に距離を詰められて、てーい、とチョップをくらった。声のトーンの割りには痛い。ちょっと涙目になりそう。涼しい顔してる沖田総悟を全力で睨み上げた。

「痛いんだけど。」
「じゃあもっぺんしてやりまさァ」

「意味わからん」
「俺ァSなんでね。そういう顔されるとそそられるんでさァ」
「はァ?」

手刀を私の頭にのせたまま、にやりと口角をあげるもんだから、背中にぞくりと、嫌な予感が走った。眉間に皺が寄る。そんな私を見て、くすりと笑うと、手が頭から離れたと思ったのもつかの間、おでこにデコピンをくらった。

「〜〜ッ!!」

痛い。今度こそ涙出そう!

「男所帯で育ったお陰で男に疎いらしいが、ここは女に飢えたゴロツキの集まりでィ。お前のその無自覚な行動にそそられる男はいくらでもいらァ。」

また私に背中を向けながら、ポケットに突っ込まれたままの反対の手から、ぽん、と何かがこちらに放り投げられた。落とさないようにキャッチすると、それは南京錠と鍵だった。

「生憎、ウチには鍵付きの部屋はないんでね。取り合えず暫くはそれで自分の身を守ってくだせェ。」

一応、他の部屋からは少し離したところではあるがねィ、と、また先を行く彼の背中を見て、半径1.5mでもいっかな、と思った。

HE WAS KIND THAT I THINK
(思ったよりいいヤツ)

「用意してくれてたの?鍵」
「ああ、それはSMグッズの、」
「やっぱり2mにしとこう。」
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