屯所へと向かう道中、山崎さんは退屈させないようにいろいろ話を振ってくれた。なんでウチの女中引き受けてくれたの?とか。ゴリラと怪力キャバ嬢にごり押しされました、と答えれば、ああ、お察しします、と苦笑いされた。
「でも偉いね、女学校に通う為に自分で費用を稼ぐなんて」
「親に苦労をかけたくないってか、はやく自立したかった、みたいな。」
「それで、昼間は勉強しに図書館に籠って、夜はアルバイトしてたんだ」
若いのにしっかりしてるね、と言いながら、後部座席のドアを開けてくれた。どうやらもう屯所に到着したらしい。
「大丈夫?疲れなかった?」
「山崎さんとお話ししてたから楽しかったですよ?」
そりゃよかった。ところでなまえちゃん、そういうことは屯所じゃあまり言わない方がいいよ。え、なんでですか。愛想振り撒かれてるって勘違いしちゃうから、ほらここ、男ばっかでむさ苦しいでしょ。ああ、納得。
そんな会話をしながら、廊下を進み、近藤さんのいる局長室へ向かう。はじめて来たけど、割りとキレイにしてるんだな、とか思いながら足を動かしていると、突然、何故か爆発音が響き、若干屯所が揺れた。え、え、なに。何が起こったの。
「……敵襲?」
「ああ、心配ないよ。ただじゃれてるだけだから。」
そう眉を下げる彼に続いて縁側に出て、ほら、あそこ、と指された方を見れば。
「危ねェ!おま、屯所でバズーカぶっ放してんじゃねェよ!殺す気か?!」
「チッ、しぶといヤツでィ」
「なんつった総悟?叩っ斬ってやる!」
死ね土方、と再びバズーカを構える明るい栗毛と土方さんの姿があった。
「……じゃれてるのレベルがおかしい気がするんですが」
「まぁ、いつものことだからね」
これがいつもあるんだと思うと、やっぱり先が少し思いやられた。今からでも帰れないかな。
そんな思いを込めて山崎さんを見上げると、きっとすぐ慣れるよ、と慰めてくれた。
I HAVE TO LEAVE
(帰りたい)
「今すぐ帰りたい、今すぐ。」
「あはは……。まぁ、話し相手にはなるからさ」
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