雲の間の青空が恋しくなってくる今日この頃。天気に相まってどんよりとした空気が漂うここ、真選組に、新しい女中がやってきた。彼女の名は、みょうじなまえ。歳は18、沖田隊長と同い年だ。

化粧もあまりしない年相応の可愛らしい子だと思う。多少、思ったことを遠慮せずに口に出してしまうところが玉に瑕だが、まぁそれだけ素直であるという証拠だろう。

そんな彼女が、女中になるまでの経緯を聞いて少々哀れに思ったので、副長へ助け船を出すよう(というか良心に付け込むよう)知恵を貸したが、これが功を奏したようで、雇用形態や業務について詳細に整理することが出来たと、朝の稽古から自室に戻る途中、廊下で満面の笑みで報告を受けたときは、自分も嬉しかった。ちなみに、乱入した沖田隊長の助言?により、雇用主は副長となったようだ。

しかし、その次に続いた彼女の発言に、ひどく驚いた。

『それでね山崎さん、私今日朝の会議で自己紹介することになったんですけど、今までの女中さんはどのような挨拶をなされていたんですか?』
『え?』

女中が朝の会議に出たことなんて、過去に一度もなかったはずだ。聞けば、それは副長と沖田隊長の両方からの提案であり、局長も了解済ならしい。一体どういうことなんだと驚いたが、その理由はすぐに知ることとなった。

『はじめまして、このたび女中アルバイトとして採用されました、みょうじなまえと申します。田舎から上京し、ここで住み込ませていただくまで一人暮らしをしていましたので、一通りの家事は出来ますが、女中として働かせていただくのは初めてのことで、みなさまに多々ご迷惑をおかけすると思いますが、真選組のお力になれるよう精進いたします。』

朝の定例会議に、異例な女中の自己紹介。今まで、女中といってもおばちゃんが多かったため、なまえちゃんくらい若い子に、当然隊士たちのテンションは上がる。やべぇ、挨拶もしっかりしてるし、可愛いな、いくつだろう。そんな浮足立つ隊士たちをけん制するように、一礼する彼女の隣りに局長がやって来ると、こほん、とひとつ咳払いをして、"本題"を切り出した。

『いいかお前ら、よォく聞け。彼女は真選組が雇った女中だが、本業は受験生だ。しかも今、女中は彼女ひとりだ。さすがに俺達100人近い人数の身の回りの世話を全部任せるわけにはいかねェ。そこでだ。』

"なまえちゃんの仕事を、ある程度は分担して俺達がやろうと思う"

簡潔に言えば、今までの俺達のシフトの中に、"なまえちゃんお手伝い"という項目が増えるらしい。そのことに異論を唱える隊士が現れるだろうと一瞬危惧したが、ふたりの後ろに控える土方さんの鋭い目付きと、局長のニコニコ顔と、なにより申し訳なさそうに眉を下げるなまえちゃんを目の当たりにして、みんな一斉に首を縦に振った。ちなみに補足情報として、彼女の雇用主が副長だと知らされれば、もう首を横に振ることなど誰もできなかった。恐るべき鬼パワー。

そんなこんなで、本格的に始まったなまえちゃんの女中生活。はじめは、正直心配だったけど、朝の会議で、あれだけのむさい男衆にも、気負いせずに挨拶出来るだけの度胸がある彼女のことだ。きっとうまくやれるだろう。

INSPECTOR'S DIALY #01
(監察日記 #01)

これからの彼女を、優しく見守ろうと思いました。
……ってあれこれ作文?
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