「ねぇ、ス○マサキッスって知ってる?」
「なんだそれ。つか豆○ば懐かしいな」

テレビから目を離さないまま、返事をする十四郎の横に座って、スマホの画面を目の前に差し出す。白いソファに合わせた淡い色のクッションを抱えてる姿は鬼の癖に超可愛い。テレビ見えねぇじゃねぇか、とか文句垂れながらスマホを私の手ごとどかすから、また目の前に差し出して、どかされて。そんな攻防を何回か繰り返した後、はぁ、とひとつ息を吐いて、やっと視線はスマホの画面へ。

「今ね、溺れる○イフっていう映画やってるんだけどさ、そのワンシーンが超やばい」
「ふーん?」

興味無さげな十四郎にお構いなしで、今しがたタイムラインに流れてきた短い動画を再生する。それは、ヒロインが缶ジュースを飲もうと口につけるも溢しちゃって、それをカレに舐められる、というシーン。首元から耳の下当たりまで、べろりと舐めあげるその様の、なんと色っぽいこと。

「ねぇねぇ、これやってよ」
「はぁ?やるかよ」

呆れたように、また視線はお笑い番組へ。ちっ、あわよくば小松菜○になれるかと思ったのに。まぁ、たいしてこの鬼さんには期待してなかったけど。

十四郎にならって、私もテレビに目を向ける。画面の中では、今大ブレイク中だとかいう若手のふたりがコントを繰り広げていた。うん、確かに彼らは面白い。

いつの間にか十四郎よりお笑い番組に見入っていたらしい私は、時折手を叩きながら、声をあげて笑っていた。ローテーブルの上には、空いた缶ビールとチューハイが増えていく。ふたりしてほろ酔いだ。おつまみに用意したはずのさきいかはとっくに空っぽ。それでもまだ、身体はアルコールを欲しているらしく、ローテーブルの上の缶ビールに手を伸ばす。プルタブに力を入れようとした瞬間、ぱき、と爪が割れてしまったのに気付いた十四郎が、テレビから目を離さないまま、代わりに開けてくれた。ありがたいけど、テレビにどんだけ夢中なんだお前。いや、無邪気に笑ってる横顔も超可愛いけどね。

さて、続いてはこのふたり!と司会に紹介されて出てきたのは、昔から私も十四郎も好きだったコンビ。テンポよく繰り出されるボケとツッコミのなんとも言えない不細工さが最高。不意討ちのボケに、口に含んだビールを思わず吹き出してしまった。あ、やば。

「おま、なにやってんだよ汚ねぇ!ソファー汚れる!」
「ちょ、ティッシュティッシュ!」

探し物は、いつの間にか缶缶たちに押されてローテーブルの向こう側へ行ってしまったらしい。取りに行こうと立ち上がろうとした瞬間、手をぎゅ、と握られて制止された。と思えば、目の前に十四郎の綺麗な顔があって。べろり、と鎖骨から耳の下当たりまで、私の肌を伝っていたアルコールの滴を舐めあげた。その様の、なんと色っぽいこと。

「これで満足か?」

そう意地悪に笑う十四郎のせいだ。やけに熱を意識してしまう。

 

「もっとちょうだい」

これで満足できるほど純情じゃないらしい


「…欲張り。」
「あんただって足りないくせに。」
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