午後3時45分。
本日最後の授業が終わるチャイムが鳴る。

あーあ、疲れたァ、最後に数Vはキツいよなァ、授業変更とかかったりぃ〜、なんて声が教室のあちらこちらから上がる中、ドゴォォォン、と一発、破壊音が真下の教室から聞こえ、机が若干揺れた。

また始まったかァ、なんて呆れた笑いが起こる中、私は盛大に溜め息を吐き出し、LHRしに戻って来た担任の制止も聞かず、ずんずんと大股で廊下を進み、階段を降る。

目的地は、破壊音の音源である3年Z組。

勢いよくその扉を開き、大きく息を吸い込んで、目の前で繰り広げられる惨状に向かって巻き舌混じりで言葉をぶつけた。


「アンタら……なにさらしてけつかんどんねん!!!!」


その瞬間に、一時停止する、騒動の原因ふたり。
教室の真ん中で、まわりの机椅子をぐちゃぐちゃにしながら、喧嘩していたであろうふたりは、お互いに胸ぐらを掴みあった体勢で、顔だけをこちらに向けた。その他の生徒はと言えば、一瞬肩をびくつかせて、あーあ、といいたげな視線をふたりに投げ掛けていた。

「今週だけでどんなけ学校の備品壊してるかわかっとんのかゴルァ!こちとら予算内でやりくりしようと必死なんじゃ!これ以上会計の仕事増やすんとちゃうぞ!過労死させる気かオラァ?!!」

そこまで言って、ゼエゼエと肩で息をしながらふたりを睨むが、当の本人たちは怯むことなく、それぞれの主張を始めた。

「なまえちゃん!違うアルよ!コイツが私の筆箱に油性マジックで落書きしたネ!お気に入りだったのに!」

「なーに言ってんでさァ。オメーがおれの弁当のおかず横取りしたんだろィ。その仕返しでさァ。」

「とんだ言いがかりネ!その前にオマエも私のフルーツジュース飲み干したダロ!」

「ちびちび飲んでるのが悪いんでィ。俺のクッキー横取りした分際でほざいてんじゃねぇやい。」

「隣のクラスの女の子から貰ったって鼻の下伸ばして自慢するから癪に触っただけヨ!腐れドSの癖にモテるなんて100年早いアル。」

「なんでィ嫉妬か?自分がモテないからって他人を僻むんじゃねぇや」

「はぁ?!誰がオマエなんかに嫉妬するかヨ!私だってモテるアルよ!この前だって購買の伝説のカレーパン貢いで貰ったネ!」

「随分悪趣味な野郎なこった。大体お前、それ条件にその野郎と放課後デートの約束したらしいじゃねぇか。安いヤツだな。」

「オマエは伝説のカレーパンの価値を知らないからそんなこと言えるアル!あれは1個550円もする超高級な一品ネ!」

「そんなんでホイホイついて行くもんじゃねぇだろィ。もうちっと気ィ付けろっつってんだよ」

「そういうオマエだってこの前告ってきた女の子に……」

「もう!!脱線しとるから!!」

私に対する言い訳から、どんどんお互いへの不満をぶつけ合う方へベクトルが変わっていくのに慌ててストップをかけた。

「痴話喧嘩もええ加減に……」「「痴話喧嘩じゃないアル!/ねぇやい。」」

「なにハモってるアルか?気色悪いネ」

「そりゃあこっちの台詞でィ。」

「はァ?こっちの台詞アルよ!大体お前なんかが私の彼氏務まるわけないネ!こっちからも願い下げアル。」

「その言葉、そっくりそのまま返してやらァ。俺だってオメーみてぇなちんちくりんに隣歩かれても困るんでィ。」

「レディーに失礼な口きくなんて最低アルな!私はまだ発展途上なだけネ!2年もすれば誰もが反応する素敵ナイスバディに大変身ヨ!」

「ほぉ〜そりゃ将来が楽しみだなァ。なんなら俺が従順なムッチリ雌豚に調教してやりまさァ。」

「……なんちゅー会話を堂々と……。」

ぎゃいぎゃいと再びエスカレートしていくふたりの言い争いに、本日2度目の深い溜め息を吐き出した。


嫌よ嫌よも好きのうち

喧嘩するほど仲が良い、ともいうしね。


( だいたいチャイナ、オメーは…… )
( サド野郎の分際で…… )

( そろそろ話聞いてもらってもええかな? )

(( ……ハイ。 ))
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