人間の死によって、およそすべてのことは抹消されるが、ただし、真実だけはまったく別である。
――――作者不明
昨夜、一人の女子生徒が死んだ。
「黙祷」
体育館に全校生徒が集まり、亡くなった女子生徒の死を悼んだ。
静かな体育館内には啜り泣く声が所々から聞こえた。
死んだ女子生徒は今年入学したばかりの1年だった。
明るく、友達もたくさんいて、どこにでもいる普通の女子高生だった。
そんな彼女は昨夜自宅であるマンションの自室のベランダから突如飛び降りた。
自殺だとされているが、理由がわからない。
遺書も何もないのだという。
そして己の手で喉を掻きむしったような傷が無数に残されていたと聞く。
何かを飲んだ形跡があるらしく、毒物でも飲んだのではないかと現在薬物検査をしている最中らしい。
とにかくおかしな箇所がたくさんある遺体だったと人づてに聞いたのはついさっきの事だった。
女子生徒の突然の死は学校にとっても生徒にとっても、大きな衝撃だった。
死んだ女子生徒の友人だろう。ついに堪えきれなくなり、膝から崩れ落ち大声で泣き出した。
咎める者は誰もいない。
全員俯いて目を伏せていた。
だがふと隣を見るとそのどちらも当て嵌まらない生徒が、一人。
同じクラスの高原灯子だった。
高原はただただ真っ直ぐと前だけを見つめていた。反らす事なく真っ直ぐと、見つめていた。
そしてしばらくしてから薄く口を開き、呟いた。
「堪忍、してな……」
ぽそりと、消えそうな声でそう呟いた。
まるで何かを知ってるかのような、
まるで自分のせいで死んだかのような、
そんな口ぶりで。
懺悔をするように、呟いたのだ。
高原はそれからゆっくりと俯きながら目を綴じ、他の生徒と同じように黙祷をした。