これは俺が見た夢。







真っ暗な空間。それに浮かび上がるよう桃色の桜と青い蝶が風に乱舞する世界。

桜の木の根本に赤い着物を着た美しい女が立っていた。


―貴方、綺麗ね。とても美しいわ。

女が俺の頬を撫でる。

―お前は誰だ。

―そのうち分かるわ。

女は笑う。女はその目で俺を見つめた。

―貴方はあの人に似てる。目も鼻も口も。とても似ている。

―あの人?

―…なんでもないわ。

女は悲しそうに笑った。

―ねえ、お願い。どうか私を――――


女は何かを言っている。何かを言ってはいるが、それが聞こえない。


女は何を言っている?

聞こえない。


女の赤い唇が綺麗に動く。


―どうか、お願い


女は縋るように俺を見つめた。



どうか、どうか



そう言ってから、突如として青い蝶の大群が俺の視界を埋めつくし、ついに俺から女の姿を完全に隠した。







夢想。




そこでいつも俺は目覚め、あの女が俺に何を言いたいのか、何を求めているのか。
結局何もわからないまま俺は朝へと帰るのだった。
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