アナザーループワールド | ナノ

それにしても何て口の悪いガ‥子供だ。妖怪と言えどあれは如何(いかが)なものか。



「………」



だが妖怪とはいえ見た目はまだ小さな子供だ…やはり部室に入れてやった方がいいのか?




『てめコラァァア!ここを開けやがれ糸目ヤロー!』







絶対に開けてやるものか。





何なんだこのガ…子供は。


早く帰れ。



『オラ糸目野郎!開けやがれ!鍵まで締めてこんなとこに逃げ込んでんじゃねーぞコラ!開けろ!開けやがれ!開けて?!開けてください!お願いしますから!ほんとマジ開けて!』








コイツはいったい何なんだ。







強気なのか弱気なのかまったくわからん。


「はぁ、」


溜息をついてロッカーをばんっと力任せに閉めた。

ついに面倒くさくなったので仕方なく俺は部室の外に出る事にした。

それに不思議とこの鬼には恐怖というものを感じなかった。


『うぉっ』


突然開いた扉に鬼の子供は驚き一歩のけ反った。

俺はそれを視界に入れ


「……悪いがもう少しで部員達がくる。それまでならお前の話は聞いてやる」


と諦めたように言うと、部室を出てすぐ横にあるベンチに座り靴紐を結びながらちらっと鬼の子供を見た。

ソイツは少し驚いたように目を見開いていた。


「話があるから俺の前に現れたんだろう?いったい何なんだ?」


俺が話すよう促すと小さな鬼は小さな拳を作り、それにぐっと力を入れ握ると喋りだした。


『…。お前、俺様がわかるか?』

「は?」


何を言っているんだコイツは。
突然の質問に間の抜けたような声をだしてしまった。


「いや、悪いがわからない。お前に会ったのは初めてだと思うが」


嘘はついていない。
どんなに記憶の糸を辿ってもコイツにはたどり着かないのだから。


「誰かと勘違いしてるんじゃないか?」

「勘違いなんかしてねぇよ。俺様は3日前に、お前に会ってるんだからな!」

「3日前…?」


3日前と聞いて思い出されるのは"あの出来事"。
先輩に憑いていた鬼を木ノ下が祓ってくれた、"あの出来事"だけ。
しかも同じ鬼だとしても大きさも風貌も、この小さな鬼の子供では似ても似つかない。



「やはりお前は何か勘違いをしてるんじゃないか?俺が3日前に会っているのは大きな鬼だけだ」

『覚えてんじゃねーか』

「は?」


さっきから間の抜けたような声しか出してないような気がする。


『まだわかんねぇのか!俺様はあの小娘に妖力を奪われた、あの時の鬼だ!』


目の前の幼い子供の鬼は切れ長の金色の目をつり上げて声を大にして言った。


「お前が…?」


俺は俺を睨みつける小さな鬼をまじまじと見つめた。

確かにこの金色の瞳と額の少し上にある一本の角には見覚えはある。
あの時の鬼の特徴もそうだったからだ。金の瞳に一本の角。

それを思い出し、頭の中で一致させる。

だがあまりにも風貌が違いすぎてにわかに信じられない。


「お前、」


小さな鬼に対し丁度口を開いたとき、少し遠くから数人の人の声が聞こえた。
はっとして顔をそちらに向けると真田や丸井達がこちらに歩いてくるのが見えた。

そしてまた顔を戻すと目の前にいたはずの金色の瞳はなく、近くの草木の茂みに走っていくところだった。


「おい!」


思わず呼び止めると鬼の子供はぴたっと立ち止まり、こちらを振り向き、


『今回はこれで退いてやるけどな、今度はあの小娘と一緒の時に出てあの時の仕返ししてやるからなっ!せいぜい怯えて待ってるがいい!』


そう吐き捨てると鬼の子供は再び走って茂みの中に消えていった。




「…………」




まさに呆然。
何という捨て台詞。

俺は少し頭が回らなくて小さな鬼が消えていった方をぼーっと眺めていた。


すると暫くして茂みに消えていった筈の鬼が再び同じ場所から突如顔を出した。

俺は思わずびくっとしそれを見返すとゴクリと息を飲んだ。





『いいか!絶対覚えてろよなっ!糸目野郎のバーーーーッカ!!!』




再び言葉を吐き捨て今度こそ本当に小さな鬼は去っていった。





「…………」





そうか。

アイツは人が情けをかけまともに話を聞いてやったというのにそういう態度を取るのか。

そうか。

そういう事を言うのかあの鬼の子供は。








お前こそ覚えていろよ。











その後、俺は少しイラっとした心を沈める為、出来るだけ黙って打ち合いに専念した。










―――……





「…と言う事が朝早くからあったんだ」

「そ、そう…なんだ…。朝から随分エキサイティングだった、ね…」

「あぁ、あんな生意気な子供にあったのは生まれて初めてだ」


柳君は窓の外を見ながら不敵に笑ってみせた。どうしよう、オーラが怖い。


「それで悪いんだが今日、用事がないなら一緒に帰らないか?またあの鬼が現れるかもしれないし、木ノ下にもどういう事なのか見てもらいたいんだ」

「うん、いいよ。その鬼の子供、ちょっと気になるし…」



それに何よりも柳君と、噂の鬼の子、あきらかに相性が悪そうだから…。





せっかく柳君と友達になって楽しい気分だったのに。
終わったと思っていた事がまだちゃんと解決してなかった。

どうなるの事やら、

ちょっと不安、です。



私は窓の外を見て何にも怖い事が起こりませんようにと祈るばかりでした。









ヒナギクの咲く空に










〜おまけ〜(朝練中)

丸「今日の柳、機嫌めっちゃ悪くね?」
仁「あぁ、無言で不機嫌オーラ全開じゃ…」
丸「アレ確実に何かあったなマジこえーんだけど…」
仁「普段感情をあまり表に出さん奴が不機嫌じゃと怖いのぉ」
桑「おい、誰か助けてやれよ。赤也の奴半泣きで柳と打ち合いしてるぜ…」
「「絶対ヤダ絶対ムリ」」

幸「ははっ!あの打ち合いマジうけるね!」
真「む…」


1番の被害者は切原赤也。

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