ダブルジョーカー | ナノ



『えーっと…、あー、アレだな、整理。そう、整理をしよう』

武藤さんは額に片手をあて、そう私達に言った。

私と紫原君は手を握りあったまま額から汗を流す武藤さんを見て頷いた。










『えー、まず。五十嵐と紫原、その手を離してみろ』

「ん」

私と紫原君は握りあっていた手を言われた通りパッと離した。


『……紫原、俺が見えるか?』

「あれ、見えないよーどこー?」

「武藤さん…、どうやら声も、聞こえないみたいです…」

私はきょろきょろとしだした紫原君を見て武藤さんに報告をした。
武藤さんは『そうか…、』と呟いてから

『じゃあ五十嵐。もう一回紫原と手ェ繋げ』

私はコクリと頷いて紫原君の大きな手をすっと握った。


「あ、見えた」


きょろきょろしていた紫原君の目は、今度はしっかり武藤さんを捉えていた。

『じゃあ次。紫原、アレ見えるか?』

武藤さんは遠くの方でスーッと動く女の子の幽霊を指さした。
紫原君はそちらに目をやると「あ、見える」と頷いた。

『じゃあアレは?』

「見えるー」

『アレは?』

「うん、見えるー」

『…………マジか』

「うわぁ…!紫原君、すごいです…!全部…見えてるんです、ね…!」

「みたいだねー」

私は感動し、手を繋いだままパチパチと自分の手首を軽く叩いて紫原君に拍手を送った。
そんなほわほわした私達を見てから、武藤さんは腕を組みうーん、と一人唸った。


「武藤、さん…?」




『どうやら五十嵐と手を繋ぐと紫原は幽霊が見えるようになるらしいな…』







「…………」

「………………」

『……………………』








「…………ねー、すごいよねー」

「こんな不思議な事も、あるもんなんですねぇ…うふふ」

『ねぇ、何でお前らそんなに冷静なの?』

「えー? 驚いてるよーすっごく。だってオレユーレー見たの初めてだし」

『どこが? ねぇ、それのどこが幽霊初めて見た奴の反応なの? 一人で動揺してる俺が馬鹿みたいじゃん』

「ふふ、武藤さん面白いですね」

『何にも面白くねぇよ!』

「でもびっくりですよね…!まさか紫原君に武藤さんや、他の幽霊さんが見えるなんて…!」

「ほんとビックリだし。武藤サンいきなり見えるし。なんかほんとにいたからマジびっくり」

「うふふ…、まじびっくり、ですね…!」

『……(何だろう…なんかコイツ等すげぇ嫌だ)』





「でも…、どうして私と手を繋ぐと紫原君にも幽霊が見えるのでしょうか…?」

私は紫原君と繋いだ手をまじまじと見つめた。

『さぁな、それはさすがに俺でもわかんねぇよ。でも"波長"が合ったとか、そんな感じなんじゃねぇの? とりあえずわかってることはお前らが手を繋ぐと紫原は俺らみたいな幽霊が見えるって事。五十嵐の目で見えるものが紫原にも同じように見えるって事だ』

武藤さんは困ったように頭を掻いた。

「んー、波長が合ったとか、そんなよくわからない話は今はどーだっていいよ」

『どーだっていいってお前なぁ…!』

「とにかく俺は五十嵐サンに謝らなくちゃ」

「え?」

『は?』

私と武藤さんはきょとん、として紫原君を見た。


「だってオレ、幽霊とかホント見えんの?って最初五十嵐サンの事疑っちゃったじゃん?だからさ、」

「あ…」








「ごめんね。五十嵐サン、それと武藤サンも」





紫原君は私と武藤さんを見て、ハッキリとそう言った。



「紫原君…」

『紫原…』








「そういうワケだから、やっぱりオレの右腕何とかしてくんない?お祓いとか専門家に頼むとお金かかりそうで嫌なんだよね」



『紫原…、お前って結構図太いよな』





マジックミラーの裏側で

(そう?とりあえずありがとー)(褒めてねぇよ!)




「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -