最近妙に身体が重くなった気がした。
「室ちーん…、なんか身体が重いし怠いよー」
「うん、てかここ2年の教室なんだけどアツシ…」
「なんか右肩から腕にかけてずしって感じで重いんだよねー何だと思うコレ。病気?」
「俺の話ひとつも聞いてないねアツシ」
この間から右肩から腕にかけて重くなった。
怠いし腕も思い通り上がらなくなったのだ。ちょっとだけイライラした。
室ちんのクラスの女の子達からきゃあきゃあ言われながらたくさんお菓子を貰ったけどいつもみたいに食べる気にはなれなくて「ありがとー」とだけ言って受け取っておいた。
「うーん、確かに最近ちょっと調子悪そうだよね…病院行ってみた?」
「この前監督に言われて行ってきたけど何ともなかった」
「そっか…、ただ調子が悪いだけかもしれないしもう少しだけ様子見てみたらどうだ?」
「……うん、そうする…」
俺はおもむろに立ち上がり室ちんの教室を出ていった。
「あ、アツシ!」
後ろで室ちんの声がしたけど振り返る気になれずそのまま出ていった。
「アツシが貰ったお菓子忘れていくなんて…、これは重症だな…」
放課後、部活をしている時も腕の重みと怠さは消えなかった。
何なんだよこれ。
医者に見せても異常はないと言われ、マサコちんや先輩に言ってももう少し様子を見ようって言われるだけだし。
いつになったらこの怠さはなくなるんだ。
バスケだって自分の思い通りにプレー出来ないし。
ほんとイライラするんだけど。何なのコレ。
右腕取っちゃいたくなるんだけど。
「なぁアツシィー、もしかしてお前何か変なモンに取り憑かれてんじゃねーの?」
「……」
部活終了後の部室で着替えていると同じバスケ部の先輩、福井健介に突然そう言われ俺は思わずぼけっとしてしまった。
周りの部員もポカンとしていた。
「取り憑かれてるって…?ユーレー、とか?」
「そうそう、だってお前急にじゃん。肩痛い腕怠いとか言い出したのってさ」
「でもいきなりユーレーって……、頭イカれたの?」
「紫原テメェ…!!」
「そういえばアツシと同じ1年に"霊感少女"って呼ばれてる子、いたよね?」
「えー?いたっけ?」
室ちんの言葉に首を傾げた。
「あぁ、その"霊感少女"なら幽霊が見えるとか話も出来るとかって俺も噂で聞いたアルな」
「そうそう。モノは試しってヤツでさ、一回その霊感少女に見てもらえよ!幽霊に取り憑かれてるかどーかさ。なっ岡村!」
「うーん、いまいち幽霊とか、取り憑かれるとかってのはわからんが医者もお手上げなんだ。一応その子に見てもらうのもいいんじゃないか?」
「えー……室ちんもそう思う?」
「先輩達がそう言うんだし試しに見てもらってくれば?もしかしたら何か助言してくれるかもしれないしさ。少しは気休めにもなるかもしれないよ」
「うーん……わかった」
いまいちノリ気はしないが仲良しの室ちんがそーゆーならしょうがない。
「なんだか面白そうアルな。見てもらったら報告するアル」
「そうそう!絶対見てもらえよ!"霊感少女"に!」
何でそんなに楽しそうなんだあの先輩達は。
フゥ、とため息をついてバタンとロッカーを閉めた。
『霊感少女』
先輩達から初めて聞いた事だけど、
胡散臭いなって思ったけど、
ちょっとだけどんな子なのか気になった。
「("霊感少女"、ねぇ…)」
俺は自然と怠い右腕を擦った。
興味の先にあるものは、
(とりあえず明日、探してみようかな)