花言葉


生徒会書記と花言葉



「葉月先輩は、ひまわりって感じがします」

ある夏の日、学校の中庭。
葉月先輩と並んで歩いていると、通りかかった花壇に、立派に咲き誇っているひまわりを見つけた。
私たちは立ち止まり、そのひまわりを見上げる。
笑顔一色の咲き方や、太陽に照らされながらキラキラと佇む姿が、彼みたいだと思った。
「ひまわりって、明るくて元気な人に例えられやすい花だよねー」
ぽつりと呟いた葉月先輩は、少し嬉しそうに微笑む。
そんな彼の手に、私はそっと触れた。
「ん?」
「それもありますけど…ひまわりみたいな人って、私は強い人だと思います」
不思議そうに、葉月先輩は私を見つめる。
促されたような気がして私は言葉を続けた。
「ほら、暴力みたいな夏の日差しに耐えて、それでも太陽に向かって咲いてますから…」
「…暴力って」
笑いながら、葉月先輩は私の手を握り直す。
指を絡めて、恋人繋ぎ。
学校なのに、という言葉は飲み込んだ。
だって今は夏休みで、学校には部活をしているか補習を受けている生徒かしかいない。
それに私も、手を繋げるのは嬉しいから。
「ひまわりかぁ…」
ぽつりと呟き、何か思いついたのか、葉月先輩はいきなり進行方向を変える。
「葉月先輩?」
「図書室行きたい!」
行こ、と私の手を引っ張り、私たちは校舎の中に入っていった。

「“私はあなただけを見つめる”」
分厚い辞典を見ながら、葉月先輩は笑う。
「ああ、うん。俺、ひまわりかも」
「へ?」
「花言葉だよ、ひまわりの」
私はあなただけを見つめる。
もう一度繰り返して、隣に座る私の頭を撫でた。
「一途ってことでしょ。ね、ぴったり」
補習中だからか、図書室には私たち2人しかいない。
クーラーが効いていて涼しいはずなのに、距離が近いことに加え、触れられる手の優しさに、私は顔が熱くなっていくのがわかった。
「あれ、緊張しちゃってる?」
「し、してません!」
「…そういうことにしといてあげる」
「………」
にこにこと完璧な笑顔を浮かべる葉月先輩から顔をそらす。
すると、腰に手を回し、私をグッと引き寄せてきた。
「え…」
「怒っちゃった?」
「…怒ってません」
「じゃあこっち向いてよ」
「う…」
おずおずと顔を向けると、きらきらした笑顔が私を迎えてくれる。
すきあり、と一瞬にして私の唇が奪われた。
「な…!」
「はい、仲直り」
「お、怒ってないって言ったのに…!」
「ほらほら、俺ひまわりだからさ」
「今のは関係ないです!」
「しー」
図書室だから、と人差し指で口を塞がれる。
誰のせいでと言いたかったけど、それも叶わず、私は誰もいない図書室で無言を余儀なくされた。

チャイムが鳴り、補習の終了が告げられる。
「これから生徒会だー」
「あ、私もGフェスが…」
「まぁ、こればっかりはしょうがないよね」
「…そうですね」
あからさまに小さくなった私の声に、葉月先輩は笑う。
「…ひまわりかな、きみも」
「え?」
辞典をパタンと閉じ、棚に戻しに行く葉月先輩の後に続いた。
どうしてですかと聞く前に、葉月先輩は私の手を握る。

「きみは、可愛いひまわり」

彼は私に、もう一度優しくキスをした。




ひまわりの花言葉

私はあなただけを見つめる

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end



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