きみが好き


確かに、俺たちは生徒会とGフェスで対立してる立場だけどね。

俺、結構優しくしてると思うんだよ。

だーって、ねぇ?

立場が違うからって。

好きになっちゃいけない理由にはならないでしょ?


「あ、おはよう」
いつもは敵対している委員会に所属する彼女の背中が目の前にあり、俺はおもわず声をかけた。
大げさなくらいに肩を強張らせて、ゆっくりと後ろを向き、「お、おはようございます」と小さく呟いた。

…そんなに怯えなくても。
可愛いとしか思えないんだけど。

「声、小さいなぁ。もう一回」
「え、えぇ?」
「おはよう」
「お、おはようございます」
「良くできましたー」
律儀に挨拶をした彼女に笑いかけ、隣に並ぶ。

今日はいい日だ。
朝からついてるなぁ。

緩む頬をそのままに、横目で彼女を盗み見る。
緊張したような顔。
むしろどうして俺が横に並んでるのかがわからないといったような顔だ。

笑ってくれてたら、完璧な朝だったんだけどなぁ。
まぁ、そんなきみも可愛いからいいんだけど。

「いつもこれくらいなの?」
「え?」
「朝。結構早くない?」
「あ、に、日直なので…」
「本当に?俺も!」
「そうなんですか…?」

ぎこちなく会話は続いていく。
俺が発する言葉に、彼女は答えてくれていた。

「京一は負けず嫌いすぎるんだよねぇ」
「ふふ、そんな感じしますね」
「だからさ、いつも付き合わされたりして、ちょっと疲れちゃうときもあってさ」
「大変なんですね…」

だんだんと笑顔が増えていくにつれ、学校が近くなってきた。
すでに門が見えている。

やばい、寂しい。
離れなきゃいけないのかな。
そりゃそうだよね。

俺ってば生徒会役員だし。
彼女はGフェスの一員。

関係ないって思ってたって。

彼女が、気にするよなぁ。

うー、と唸りながら立ち止まる。
俺につられて、彼女も立ち止まった。

「葉月先輩?」
「……ん?」
「どうしたんですか?」
覗きこんできた不思議そうな顔は、俺の表情が映ったものかもしれないと思った。

葉月、先輩って。

「…俺の、名前」
「名前?」
「名前で呼んでくれてたんだ…」

嬉しい。
なにこれ。

やばい。

嬉しすぎる!

「な、馴れ馴れしかったですよね…!すみません…」
「ううん、いい」
「え?」
「名前で呼んで!」
「は、はい!」

うん。
今日はもういい。

満足できました。

たとえ校門でさよならしたって、今日は一日いい気分で過ごせる。

再び歩き出した俺たちは、校門をくぐる。
そして俺は彼女と少し方向を変え、離れて歩いた。

「葉月先輩?」
「…Gフェスの誰かに見られたら、きみが気まずいでしょ?」

名前で呼んでくれるのはすごく嬉しいんだけど。
せっかくの決心を、鈍らせないでほしい。

「でも昇降口に行きますよね?」
「そうだよ」

せっかくの、決心を。

「職員室も、行くんですよね?」
「…そうだね」

にぶらせないで。

「…一緒に、行きませんか?」


「うん、行く」


さようなら俺のもろい決心。
こんにちはイバラの道。

「でも、あとで何か言われない?」
「今の葉月先輩は、生徒会じゃなくて日直ですから」
「…そうだったね」

もう一度、彼女の隣に並ぶ。

まっすぐなきみが好き。

そこを突かれて、生徒会とGフェスとの争いに一番に巻き込まれてしまうけれど。
それでも一所懸命抗う君を、とても可愛くて、好きだと思う。

「このまま、ずっと並んで歩ければいいのに」
「え?」
「生徒会とか、Gフェスとか、関係なく」
「…どういう、意味ですか?」
「さぁね?」

にっこりと笑って、彼女の頭を撫でる。
真っ赤になっちゃって可愛い。

「競争率高いよねぇ」
「競争率?」
「きみの知らない話」
ううん、と唸ると、ブレザーの裾を掴まれる。

そして、彼女は。

「きみじゃ、ないです」

真っ赤な顔で。

「名前で、呼んでください」

爆弾投下。


…もう、この一言だよね。




きみが好き。




(…葉月先輩こそ、あとで何か言われませんか?)
(大丈夫だと思うけど)
(でも…)
(なんで?)
(直江先輩が、3階からこっちを睨んでます…)
(…うわぁ)


end



あれ、意外と葉月くんいい。
とか思って…
キャラがわかりませんけどね!



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