ありがとう


2月3日。

俺の生まれた日。

誕生日なんて、たいして意味を持つものでもないと思ってた。

誕生日って、生まれたことを祝う日なんだって、じいちゃんが言ってた。

じいちゃんとばあちゃんは確かに祝ってくれたけど。

誕生日おめでとう、なんて。

本当に言われたい人たちに、俺は言ってはもらえなかった。


だけど、今は違う。

じいちゃんはもういないけど。

不器用なばあちゃんがいて。

信頼できる仲間がいて。


最愛の人がいる。


「翼くんっ」

祝ってほしいと、思える人。

「今日は、何の日でしょう?」

「ぬははっ!今日は節分だ!」

期待と違う答えに不満なのか、最愛の人、月子はぷぅっと頬を膨らませる。

「ぬぅ、どうしたんだ?」

緩む頬を隠せずに、月子の頬をつつく。

「…翼くん、わかってるでしょう」

「なにがなにがー?」

わかってよ。

君から言ってほしいんだ。

「みんな待ってるよ」

「みんな?」

「颯斗くんに梓くん。あとね」

にっこり笑う君を見るたびに、俺の胸はほっこりあったかくなる。

愛しいって気持ち。

幸せって気持ち。

君が教えてくれたんだ。

「駆けつけてくれたんだよ」

「…それって、もしかして」

「ね、早く行こ!」

俺の手を引っ張り、迷いなく廊下を進む。

目的地は、きっと生徒会室。


なぁ、その前に。


君が一番先に言ってよ。


「月子」

手を引っ張られながら、彼女の名前を呼ぶ。

「今日は何の日だ?」

「…わかってる、でしょう?」

「でも、言ってほしい」

「翼くん」

「月子に、一番最初に」

頬をピンク色に染めた愛しい彼女。

微笑む最愛。


「…誕生日、おめでとう」


2月3日。

俺の生まれた日。

生まれたことを、大事な人たちが祝ってくれる日。


「生まれてきてくれて、」

愛しい人が。


「ありがとう」


喜んでくれる日。


「月子」

「は、早く行こう!」

照れた君の横顔が、言ってくれてる。

今日はとっても、素敵な日だって。




ありがとう!




(遅かったなー、翼!)
(ぬぉ!やっぱりぬいぬいだ!)
(翼くんのために来てくれたんですよ)
(待たせるなんていい度胸だよ)
(まぁまぁ!ほら、始めましょうよ)


((((誕生日おめでとー!))))


end



翼ハピバ記念。
2日遅れた…






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