手を繋いで眠ろう


きみの背中が、怖いんだ。

「ねぇ、約束して」
「…?なにを…?」
眠そうな彼女を無理矢理こちらに向かせる。
目線を合わせるようにして、彼女の両頬を包んだ。
「いく…?」
「……」

顔を見れば、きみなのに。

押し寄せてくる悲しみに、負けそうになる。

暗闇の中。
ベッドには僕たちだけ。
他の影は、ない。

ない、はずなんだ。

「郁」
「…っ」
ふわりと頬に触れられた感覚に、ふっと目を開ける。
いつの間にか自分が目を閉じていることにも気付かなかった。
「約束、聞くよ。なぁに?」
「うん…」
子どもに言い聞かせるみたいにゆっくりと紡がれる言葉に、体の力が抜けていく感覚がする。

ねえ、きみは怒るかな。

きみの背中に、姉さんの影を見るんだ。

重ねてるんじゃなくて。

…見えてしまうんだ。

いないからこそ、知る。

人は、いなくなるんだって。

いなくなってしまうんだって。

「月子」

だから、約束して。

僕に背中を見せないって。

僕の前からいなくならないって。

…ずっと。

「…ここに、いるよ。郁」




手を繋いで眠ろう。




(…きみがいたいって言うんなら)
(ん?)
(傍にいてくれてもいいよ)
(…天の邪鬼)
(何か言った?)
(…傍にいさせてくださいって言ったの)


end



郁!
難しいよ…

有李の後ろ姿は
つっこに似ている。


20110126






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