ざわめきは輪の外で


「どうしたんだよ、キイタ」
「え?」
「…今日、ミスってばっか」
「あー…うん、ごめん」
「具合でも悪いのか?」
「ビョーキ?」
「っていうか…うん…」
「?」
「…?」


「今日、美影っち来てなかったなと思って」
「円城寺さん?」
「…来てなかったっけ」
「いや、いつもはさ、恵人さんたちの反対側にいるんだよ。変装しててもステージからわかるし!」
「ふぅん…?」
「でも、今日はいなかったんだよな…」
「というかさ、キイタ。聞いてもいいかな」
「ん?なに?」
「…大和、言って」
「なんで俺」
「なになに。なんのこと?」


「…2人、付き合ってんの?」
「………え?」
「いや、ほら…キイタってよく円城寺さんと一緒に遊んでるしさ!会話の中でもちょくちょく出てくるし…」
「毎回チケットも自腹で渡してるし」
「もしかして付き合ってるのかな、って…」


「……付き合って、ない」
「でもお互い好きなんじゃないの」
「や、大和…!そんなはっきり…」
「………」
「キイタ?」


「…向こうは違うかも」
「え?」
「ちょっと自惚れてたんだ。美影っちも俺のこと好きって思ってくれてるんじゃないかって」
「…ってことは、なんかあった?」


「……この前の土曜日さ、チケット渡そうと思って、美影っちのこと遊びに誘ったんだ」
「断られたとか?」
「ううん。…でも、用事があるから午後からがいいって言われてさ…」
「…午後からって普通じゃん」
「大和は休みの日はなかなか起きないもんな…」
「いつもは午前中から会うの!起こしてもらうし」
「………」
「…ごめん、続けて」


「時間前に駅に着いて、待ってたんだ。そのとき、遠くに美影っちを見つけたんだけど」
「けど?」
「…男と、一緒だった」
「えっ」
「しかも、あの小宮葉月と」
「……誰」
「あ、あの生徒会の?」
「…だから誰」
「つ、付き合ってるのか、その2人」
「…わかんねーけど」
「キイタの早とちりとか」
「そ、そうだよ!用事の後にたまたま会っただけかもしれないし!」
「本人に確認すればいいんじゃん?」
「…そりゃ、聞けたら一番いいんだけど」
「じゃあ聞け」
「や、大和…」
「キイタがそんなんだと、迷惑」
「…」
「はっきりさせろ」


「…こわいんだ」
「……」
「これでもし、付き合ってたりとかだったら…きっと今までみたいに一緒にはいられないだろうし」
「でもそうじゃないかもしれない」
「100%違うとも言い切れないだろ?」
「じゃあ、ずっとこのまま?」
「……」
「このまま見て見ぬふりして会い続けんの?その小宮って付き合ってる奴がいるのにキイタと遊んでるとか、それって二股かけられてるみたいじゃん」
「…美影っちはそんなことしない!…そんな子じゃない」
「なんで言い切れるんだよ」
「なんでって…」


「見てきたから、だろ?」
「…孝介…」
「なぁ、キイタ」
「……」
「キイタの気持ち、ちゃんと伝えた方がいいんじゃないか?」
「え…」
「はたから見てて、キイタが円城寺さんといるのがすごく楽しいんだろうなって、よくわかる」
「……」
「…だからこそ、このままじゃダメだってこともわかってるよな?」
「…う、ん」
「キイタのこわいって気持ちもわかる。でも、大事なことを何も言えないで、後悔したこともあっただろう?」
「ああ、あの」
「大和。今はそこを掘り下げなくていいの」
「…はい」


「ってことで、善は急げだ」
「へ?」
「今すぐ会いに行けってこと!」
「え、ちょ、おい…?」
「ほら、早く!」
「…あ、その前に」
「どうした、大和」
「その小宮って奴と一緒にいるのを見たあと、どうした?」
「一応は気になってたんだな…」


「その日は………あ」
「ん?」
「キイタ?」
「わ、ちょ、ちょっと待った!財布!」
「?なんだよ」
「あった!チケット!」
「は?」
「思い出した!っていうか忘れてた!」
「…まさか」
「渡してない」
「そーだそーだ、ショックで渡すの忘れてたんだ。そりゃ今日来ねーや。知らないもん」
「バーカ」
「大和、もっと言ってやって」
「あはは…ごめん。ありがとな、2人とも」
「ん」
「頑張れよー」





「…孝介、保護者みたいだった」
「保護者みたいにさせてるのは誰だよ!」
「キイタ」
「もう一人いると思うんだけど」
「………」
「無視はやめろ、無視は」
「…キイタは、見つけたんだ」
「大和?」
「………」
「…大和さ。この前、同じ学部の子に告白されて、断ってたよな」
「ん」
「それって、さ。やっぱり…」
「そう。やっぱり」
「………」





「だって、ひめじゃなかったから」





“out of circle”

To be continued...?

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