あまい幸せ


甘いものが好きだ。

ふわふわの生クリームも、酸味のあるイチゴも、とろけるようなチョコレートも。

疲れをとってくれるし、あの甘さが口の中に広がる瞬間に感じるあの気持ちが、きっと幸せというものなんだろう。

「ん」
そして最近、もうひとつ甘いものを見つけた。
「…み、宮地くん…」
「…どうした?」
「きょ、今日、大胆…っ」
ぎゅう、と俺の服の裾を握ってくる彼女の真っ赤な顔。
こういうときに紡がれる声が、俺の理性を奪っていく。
「…いや、だったか?」
目を伏せながら小さく首を横に振る彼女の髪に、顔を埋める。
「よかった」
呟いてから、長くて綺麗な髪をすいてみる。
凛とした部活での彼女とは正反対の、弱々しくて細い髪質。
甘い匂いがする。

この髪も甘いだろうか。

そんなことを考えながら髪を弄んでいると、さっきから動かない彼女に気づいた。
「…やっぱり、いやだったか?」
「う、ううん…っ」
顔を上げた彼女と至近距離で目が合う。
彼女の瞳に吸い込まれるように近づき、唇に触れた。
「ん」
「…」
唇が離れたあとも、彼女は俺を見つめていた。
真っ赤な顔で、瞳を濡らして。

まるで誘っているみたいに。

「部屋だから…大胆、なの?」
ぽつりと呟く彼女。
裾をきつく握ったまま、瞳は俺を映している。

俺だけを、映していた。

「そうかもしれない」
呟いて、我慢できなくなった俺は彼女の後頭部を掴み、さっきよりも深く口付けた。
「ん、ぅ」
わずかな隙間から漏れる吐息。
なんでお前は、こうも俺を煽るのがうまいんだろう。
「…そのときが来るまで、我慢できそうなら、する」
「宮地くん…?」
「だから今は、これだけ」

触れ合う唇。

あまい、あまい。

彼女とのキス。




あまい幸せ。




(そういえば、今日は甘いもの食べてなかったね)
(…今日は、いらないからな)
(へ?)
(甘いのは、お前だけで充分だ)
(…っ、やっぱり、大胆!)


end



宮地くんはふたりのときに
ちょっと強引になればいい







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