確信犯、ですか


「今日は犬飼くんの天敵の日だね」

なんてわかりやすい思考回路だと思いながら、口には出さない。
代わりにハイハイと気のない返事をして、雑誌を見ながらがしがしとこいつの頭を撫でた。

「にゃんにゃんにゃん、だよ」
「………」
「聞いてる?にゃんにゃんにゃんの日」
「……聞いてる」

隣に座る夜久の頭に触れる手に力を込めて、俺の肩に押さえつける。
はじめは少し抵抗したものの、俺の手から力が抜けそうにないことを悟ったのか、おとなしくなった。

そうだ、それでいい。

おとなしくして、それ以上言うんじゃない。

「にゃんにゃんにゃん」
「………」
「にゃんにゃん」
「………」

これは、もしかしなくても、誘われてると思っていいのか。
こいつに限ってそんなことはないと思うけど、こうも連呼されるとそうなんじゃないかと思えてくる。

確信犯なんじゃないか、こいつ。

「夜久」
「なに?」
「次それ言ったら、俺の理性が決壊するからな」
「………はい」

小さい声で答えた夜久の顔にちらりと視線を向けると、真っ赤な顔で俯いているのが見えた。
それでこそ夜久だよなと内心苦笑しつつ、さっきと違って優しく頭を撫でる。

別に何を話すでもなく時間は過ぎ、門限が近づいてきた。

「…時間じゃね?」
「あ、うん…」
「送ってく」
「うん、ありがとう」

職員寮なんて隣のくせに、わざわざ送るのは、やっぱり少しでも長く一緒にいたいから。
弓道部の中にいれば、可愛くないなんて平気で言えたりするのに、2人きりだと何を言ったらいいのかわからなくなってしまう俺は、こうして態度に表すことが多い。

職員寮の中にある夜久の部屋の前まで手を繋ぎ、キスをするのはドアの内側。
いつものように唇を合わせる。

けど、今日はなにかが違った。

「?」

それじゃ、と上げようとした手を、夜久に掴まれている。
意図がわからず夜久を見つめると、さっきと比べ物にならないくらいに顔を真っ赤にして、俺の手にぎゅっと力を込めてきた。

「…帰れねーんだけど」
「……うん」
「何かあったか?」

小さく首を左右に振り、意を決したように俺を見上げる。

そして、こいつは。


「…にゃん」


小さく鳴いたのだった。




確信犯、ですか。




(どうしてにゃんにゃんって言うのダメなの?)
(にゃんにゃんって、今したようなこと言うから、世間では)
(………えぇ!?)
(だから、人前でもう言うなよ)
(…犬飼くんの前でも?)
(………お前、俺のこと何かと試してるだろう)


end



猫の日記念!

つっこににゃんにゃん
言わせたかった話

犬飼くんが
どうしてモテないのか
不思議だよ!

というか
キャラが定まらない…


20110222







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -