穴があったら入りたい


冬組

※キャラ崩壊、下ネタ注意
















「“穴があったら入りたい”って、エロいよなぁ…」

とぬいぬいが呟いた瞬間、きぃぃぃぃぃ!と黒板を爪で引っ掻く音が生徒会室に響き渡る。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
「なんで俺までぇぇぇぇ!」
耳を塞いでも聞こえてくる不快な音を奏でているそらそらは、いつもと違って黒い笑みすら浮かべてはいなかった。
「…は、颯斗…全力で謝るからその目はやめてくれ…!」
「わ、笑ってないのだ…」
軽蔑するような眼差しから、にっこりとした笑みになる。
真っ黒い、けど。
「その全力で謝る姿勢を見せていただきましょうか」
「も、申し訳ない…っ!」
「おお!」
これが噂に聞く寝下座!
まさかこんな身近で見れると思ってなくて、俺はいそいそと写メを1枚取った。
「翼くん、その画像、僕に送っておいてください」
「おっけー」
「ま、待て!どうする気だ!」
「あらゆる人に見せます」
「いやだぁぁぁぁ!」
素早く起き上がったぬいぬいは、俺の手から携帯を奪う。
「……ぁ」
送信完了を告げる画面を見て、ぬいぬいはその場で崩れ落ちた。
「ありがとうございます、翼くん」
「ぬーん。俺しばらく待受にしよっと」
「お前ら…俺をどうしたいんだ…」
ううう、と唸りながら、ぬいぬいはゆっくりと会長の席に戻っていく。

「つーか、月子いないんだし、これくらい言ってもいいだろ!」
「僕が聞き苦しいんです」
「なんだそれ!颯斗、お前それでも健全な男子高校生か!?」
「発情期の猿みたいな発想をする男子高校生を、健全とは言わないと思いますが?」
「そらそら、今日はキツくないか…?」
黒いオーラを惜しげもなく漂わせるそらそらに、ぬいぬいは会長の威厳も何もなく、「すみませんでした…」と呟いた。

「でもー、なんでさっきのぬいぬいが言った言葉はエロいんだ?」
素朴な疑問に、2人が固まる。
「ただの慣用句だろー?」
わからないぬー、と言えば、そらそらはにっこり笑って、「今日だけは貸してあげます」と耳栓を手渡してくれた。
何かを悟った様子のぬいぬいが、耳栓をつけた俺の両手を握る。
「翼ー!お前、父ちゃんを裏切るのかー!!」
「聞こえないぬーん」
「白を黒く汚すのはいけませんよね、会長…?」
「待て颯斗!話せばわかる!!」
「聞こえません」
いやに楽しそうに黒板を引っ掻くそらそらと、耳(というより頭)をおさえて悶えるぬいぬいの姿に、俺は不思議な安心感に包まれていた。

そらそらが黒板をしまい、耳栓を外したところで、廊下から小さな足音が聞こえる。
ぬいぬいが大それたことするのも、そらそらが黒板を引っ掻くのも、“いつも”のことで安心するけど。
それでもここには“1人”足りない。
「ただいま帰りました」と言いながら生徒会室に入ってくる彼女の笑顔も、俺に“いつも”の安心感をくれる。

「今日も一日平和だなー」

睨んでくるぬいぬいの視線には気付かないふり。


まだ終わりが来ることに気付いてない、俺が何も知らないでいたときの、ある日の生徒会室での出来事だった。





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