とらわれてるみたい、です


「おい、きーてんのかよ」
「いたっ」
デコピンをされ我に返る。
私の傍らにはデコピンの犯人である翼くんが立っていた。
「なんだ?具合でも悪いのか?」
「ううん…そうじゃないんだけど」

視線をね。
感じるんです。
結構遠くの方から。

「大丈夫かよ…保健室行くか?」
心配そうな翼くんの顔。
「だ、大丈夫だか」

「翼くん、さっき宮崎先生が探してたよ」

私の言葉を遮る声。
にこやかな雰囲気で話す彼は、自然な動作で私の肩に触れる。
「マジすか…行きたくねぇなぁ」
「でも怒ってる感じじゃなかったよ?」
「うー…じゃあ、行ってくっかな…」
「うん、いってらっしゃい」
「いってらっしゃい…」
おもいきり肩を落とし、教室を出ていく翼くんの背中を最後まで見送る。

「…なに、喋ってたの?」

静かな声が頭上から降ってくる。
隣に立つ彼の手は、未だに肩に乗せられていた。
思わず背筋をピンと伸ばす。
「べ、別に何も…」
「ふぅん?あんなに楽しそうに笑ってたのに?」

この声。
みんなに聞こえない声。
だけど私には、はっきり届く。

いつもの可愛らしい彼じゃなくて。
ふたりのときに見せるような。
強引で、嫉妬深い。

男の、陽向くん。

その声を聞くと。
体の奥が熱くなる感覚に襲われる。
恐怖もあるのに。
それすらも凌駕して。
彼を感じたくなる。

「…学校でそんな顔しちゃダメ」
人差し指を唇にあて、私の顔を覗きこむ彼の顔は、いつもの可愛い陽向くんだった。
「今日の夜も、部屋に行っていい?」
声だけが、甘く低くて。

私は静かに頷いていた。




とらわれてるみたい、です。




(陽向さん、ゴリ宮呼んでないって言ってましたよ!)
(本当?ごめん、間違えちゃったみたい)
(もー、これで6回目っすよ)
(6回も悪いことしてるってことじゃないのかな)
(…陽向さんの後ろに黒いものが見えるんすけど)


end



陽向は腹黒!






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