やきもち妬いて


「お前、スカート短くないか?」

「え?」
「もうちょっと長くできない?」
「ど、どうしたの?」
ぐい、と隣に立つ私のスカートの裾を引っ張る錫也。
ぷくっとほっぺたを膨らませている。
こんなときの錫也はお母さんじゃなくて、男の子って感じで可愛い。
思わず笑ってしまった。

「なんで笑ってるんだよ…ちょっと怒ってるんだからな」
「ふふ、うん、ごめんね」
「…全然わかってないじゃないか」
「え、わかってるよ!寒そうって言いたいんでしょう?」
「ああ…お前はそういう子だったよな」
はぁ、とため息をついてうなだれる錫也に、私は首を傾げる。

「俺、お前のなに?」
「え?ど、どうしたの?」
「いいから。俺はお前のなに?」
まっすぐに見つめられて改めて聞かれると、正直照れてしまう。
ぎゅう、と握られた両手から、熱が全身に回っていく。

錫也とはずっと一緒にいたけれど、今の関係になってからは日が浅い。
錫也の傍にいられて、安心するし嬉しい。
だけどそれ以上に、ドキドキだってする。

今みたいに見つめられたら。

もう、特に。

「月子」
「え、と…錫也は…」
「…うん」
「………か、れし?」
「なんで疑問形なんだよ…」
「は、恥ずかしいんだもん!いきなり、どうしたの…?」
うーん、と唸る錫也は、私の手を離して片手で口元を覆った。
顔が赤い。

もしかして、照れてる?

「…でも、彼氏って、思ってくれてるんだよな」
「?う、うん…」
「お母さんじゃない、よな」
「うん…?」
「…心配してるのは、寒さじゃない」

そう言った瞬間に伸びてくる錫也の手。
気付いたときには腕の中。

「錫也…?」
「嫌だって言っても、今は離さないからな」
「……うん」

ここが帰り道だってことも忘れて、私も錫也の背中に腕を回す。

あったかい。
安心する。

私、本当に。

「…錫也が、好き」

言った瞬間、バッと体が離される。
見上げた錫也の顔は、さっきよりも真っ赤。
「錫也?」
「…お前なぁ…っ」
ぱくぱくと口を動かす錫也は、普段見れないものだった。
思わず、また笑ってしまう。

「…また笑ってる。言っておくけど、俺、今嫉妬したんだからな」
「嫉妬?」
「お前の足を見た男に」
「えっ!?」
「見せたくないんだよ、お前の足も。これ、お母さん目線じゃないからな」
「…ふふ」
「…笑うな」

笑ってしまった私に、甘いお仕置き。
唇に触れるやわらかい感触。
名残惜しそうに、ゆっくりと離れていく。

見上げた錫也の顔は、やっぱり真っ赤で。
きっと私の顔も、錫也に負けないくらい真っ赤なんだろう。

「もう一回言うけど、俺、やきもち妬きだから」

そう言って、はにかむ錫也。
愛しいって、こういうときに使う言葉なんだって思う。

嬉しい。

だって、やきもち妬くって。

好きだよって言ってくれてるのと、一緒でしょう?





やきもち妬いて





(でもこのスカート、折ってないの)
(それでその長さなのか!?)
(そんなに短い、かな?)
(…裾下ろし、してみるか…)
(今の錫也、お母さんだよ!)


end



錫也は月子至上主義






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