渡辺くん2
渡辺くんは小食だ。
それには最近気づいたのだけど、本当に全然食べない。というか、ずっとゲームしてる。時々欠伸をして、机にうずくまったりはしているけれど、ご飯を食べるそぶりはまるで見せない。
週に一、二度くらいおにぎりを一つ持ってくるけど、それだけ。私なんて二段弁当でようやく丁度いいくらいなのに!
……で、どうしてこんなことを言い出したのかっていうと。
「ねえ、大丈夫?」
「いいから渡辺くんは黙ってて!」
「いや、だって凄い勢いで鳴ってるし……」
そうなのだ。
お腹が。
「心配されても変わらないからほっといてよバカ!」
空きすぎて、というなんとも恥ずかしい状況で、隣には大好きな渡辺くんもいて。しかも授業中! 軽く死にたくなるくらい最悪だ。
渡辺くんが食べないなら私も、なんて変な意地張ったのがいけなかった。
無意味な負けず嫌いの性格を今ほど呪ったことがあっただろうか。
見れば、渡辺くんが呆れた様に笑っている。
元はと言えば渡辺くんのせいなんだから。
「渡辺くんが食べないから……」
「何それ、おれのせいなの?」
「うん」
「即答!?」
ひどっ、と言いながらも渡辺くんは可笑しそうにくつくつと笑う。
笑顔が見られるのは嬉しいな、なんて思ったのもつかの間。
――ぐう。
「あっははは! もう堪えきれないや」
ああもう、渡辺くんの馬鹿!