物体Sの血液は海水
だだっ広い屋敷を承太郎は歩く。しかしふと、おかしな扉がある所に出る。そのおかしな、観音開きの豪勢な扉を蹴破る様にして突入する。

「やぁ、待っていたよ。僕の子孫、空条承太郎」

ソファに座っていた人物がゆっくり立ち上がる。

「テメェ、僕の子孫とはどういう事だ」
「どういう事って……そのままだよ。僕は、ジョセフの祖父。ジョナサン・ジョースター」

聖人とも呼ばれていたあのジョナサン・ジョースターが、今殺さなければならないDIOの仲間になっている。何故だ、そんな疑問が堂々巡りする。

「何故僕が、DIOの仲間だって知りたいかい?」
「……教えろ」

よいしょ、とジョナサンが背の低い椅子に座る。

「あの時、確かに僕は死んだ。けど、DIOが生き返らせた、首を繋げてね」

ちらりと痛々しい傷が見える。

「起き抜けざまにDIOは、僕を愛してる、とだけ言ったんだ。涙をポロポロ流してさあ」

うっそりと頬を染めながら言う。それは、正真正銘愛し合っている事を感じさせる。

「つまり、僕とDIOは恋人同士。これでわかったかい?」
「つまり、テメェはDIOの恋人。だから俺はテメェを倒す」
「つれないなあ」

スタープラチナがジョナサン目掛けて拳を振り上げる。

「ハーミットパープル!」

ずるりとジョナサンの腕から蔓が伸び、スタープラチナにまとわりつく。スタンドを完全に固定され、承太郎共々その場に止まる。

「承太郎。僕は君を気に入った」

唇にジョナサンのそれをあてがわれる。瞬間承太郎は力が抜ける。ジョナサンはさっきまで座っていたソファに倒れ込む。ジョナサンに覆い被さった承太郎は、いつの間にかキスの主導権を奪い、ジョナサンの舌を追い始める。

「…はぁ、んんっ、良い、よ承太郎っ……」

だんだん深くなるキスに頃合いを見たジョナサンが舌を伸ばし、承太郎の喉に肉の芽を植え付ける。
正気に戻った承太郎がジョナサンを引きはなそうとするも、それは一瞬で。直ぐに抵抗は終わった。
そしてやっと離れたジョナサンは承太郎の目の色が赤に変化していくのを見る。

「……ねぇ、承太郎。僕の事好き?」
「………愛してるぜ。狂おしいほど」
「そっか。なら良かった」

ジョナサンは三日月のように笑う。それに反応したか、承太郎はジョナサンを抱き締める。

「じゃあ、ソファの後ろにいる承太郎の仲間を、どうにかしてくれるかい?」
「――わかった。少しで戻ってくるから待っていろ」

学ランがするりと音を立てて落ちる。

「そういう事だ。ジョナサンのために」

――死んでくれ。

そう宣言した承太郎の声、ジョナサンの高笑い、花京院達の叫び声が部屋に響き渡った。

 


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