海に溺れる
 
がたがたと馬車が揺れる。そして、ギッと道に止まり、勢いよくディオは馬車を開ける。ここの貴族はさぞ、自分の踏み台になってくれるのだろうかと、期待を持ちながら。

「君はディオ・ブランドーだね?」
「そういう君はジョナサン・ジョースター」

にやにやと嫌みったらしい笑みを浮かべてジョナサンに笑いかける。
――――――なぁんだ、こいつは人にへーこらする態度じゃあないか。はっきり言って甘ちょろい。ちょろすぎてゲロが出そうだ。

「僕はジョジョって呼ばれているんだ、よろしくね」

ニコニコと笑い、ディオに手を差し出す。その手をぐっと握り、様々な悪巧みを考える。

「そうだ君の事、今度から豚野郎って呼んでいい?ああ、やっぱり嫌か。じゃあ…ううん何にしようか…」
「…はっ?」

突然のサドスティック発言に浮かべていた悪巧みが綺麗さっぱりに無くなる。もしかしたら空耳なんじゃないかと思い、間抜けた声を出す。

「二回も聞かないで欲しいなぁ…。やっぱり豚野郎でいいよね。改めてよろしくね、豚野郎」
「あ、あぁ…」

相手のペースに丸め込まれたディオはただ、ジョナサンを穴があくほど見つめるしかなかった。

――――

「父さん、おはよう」

昨日の出会いとはうってかわって、ジョナサンは非常に少年らしい笑みを浮かべてジョースター卿に挨拶をする。

「あ、おはようディオ!」

昨日の事を思いだし、少しドキリとする。

「お、おはようジョジョ」
「今日は雨降っちゃったね…。何して遊ぼうか?」
「ポーカーはどうだ、ジョジョ」
「それ僕得意!やろやろ!」

ジョナサンに手を引かれて部屋につれてかれる間、ディオはにやにや笑いが止まらなかった。なぜなら、イカサマはディオの大得意だったからである。

―――――

「――ロイヤルフラッシュ!今度こそディオの負け!」
「何故だ……」

ディオはイカサマをしたはずなのに、ボコボコに負けてしまった。イカサマが通っていれば、今頃最強と謳われるファイブカードでジョナサンを追い詰める事が出来たのに。

「はい、じゃあ僕に負けたから罰ゲームね!」

この前のサドスティックなジョナサンといい、今の罰ゲームといい、嫌な予感しかしない。靴を舐めろだとか、椅子になれなど、随分屈辱的な罰ゲームだろうかと予想してた時に、一変したジョナサンは恐ろしく淫らな声色でこう言った。

「僕にキスして」

男同士のキスなど、気持ち悪いのにも程がある。しかし、自らが提案した罰ゲームなのだからしょうがない。ディオは腹をくくった。

「行くぞ、ジョジョ」
「お好きにどうぞ。豚野郎」

唇が当たった瞬間、ディオの隙を突き、ジョナサンはディオの口内に舌を挿入する。しかし、ディオがそれに驚き、ジョナサンの舌を噛んでしまう。

「もう、冗談なのに」
「…っ、このアホが!」

ジョナサンに数限りないボキャブラリーを駆使して罵声を浴びせ続ける。しかし、全くといっていいほどそれに反応してないジョナサンは微笑を浮かべて聞き流している。

「…くそっ!もういい!」

蹴破る勢いで、マホガニーのドアを開ける。そしてディオは雨より大きい足音を響かせながら出ていった。

さっきとは打って変わって微笑から妖艷な笑みに変わったジョナサンは一人、ポーカーとは別のテーブルにあった食べ掛けのチョコレイトを口に含んだ。

「…やっぱり少し苦いほうがいい、かな」

そしたらディオに似るはずだからと、一言付け加えて。


 


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