もし、重荷になったら殺してね。
 

絢爛豪華な船が爆発すると同時に、自分をここまで追い詰めた男の生首を抱え、船から脱出した。

―――また、夢を見た。

隣ですうすう寝ているジョナサンを見やり、溜め息をつく。
何故この男は、一度殺されたのだというのに寝ていられるのだろうか。それは他でもない、この自分が体をくっつけた様にして吸血鬼にしたのだ。しかし、吸血鬼にしたからといって、このままではなかった。黄金の精神は、肉体が結合して甦る事を拒み、なくなくこのディオの血を使って幼児に戻した。

故に記憶は失い、すっかりディオを親同然として見ている。だが幼児とはいえジョナサンは、DIOの血を飲み、躯の半分はDIOの血を巡らせている吸血鬼だ。なので、毎回自分の血を食事に入れている。
確証は無いが、もしかしたら、スタンドが現れるだろう。このまま成長し、来る日には先祖と子孫の同じ血縁者同士で争うなど、滑稽極まりない。けれど、それで人類の頂点に立てるならば、それはそれで乙かもしれない。

「んぅ…?デ、ィオ…?」

夜明け前の躯を射す風に気を取られていたが、懐にいる小さい声に目をやる。
ジョナサンが目一杯に泪を溜めながら、DIOを見つめる。それを撫で、まだ昼だから寝ろというと服の裾を掴み、こんこんと寝てしまった。
DIOは気が向いたのでふわふわした青色の髪を撫でた。ジョナサンから覗く、星形の痣を消す様にして付けてある鬱血の形をぼんやりと見つめる。すると昨晩はやり過ぎた、と苦笑いを浮かべた。

また風を吸い込むと、少々微睡んだ。明け方の風ほど清らかなものは無いのを、人の血を飲む吸血鬼は知っていた。そして吸血鬼は考えに耽る。

――ジョナサンは一日に人間と同じの、約一週間成長する。『世界』を使えば、また早くなるのだが、躯が弱くなるなど、リスクがあるのだ。そんなこと、このDIOが許すはずはない。もし躯が弱いならば、この血を使った意味が無くなってしまう。共に戦い、死ぬ時には共に。

―――そろそろ、空が明るくなってきた。寝台の横にあるベルを鳴らすと、ヴァニラが飛んでくる。
しかし、脇にいるジョナサンを怨めしそうに見る。だが、窓とカーテンを閉めろと命じると、ものの10秒で終らせる。そしてまた来た時の様に、素早く戻っていった。ヴァニラが嫉妬するのは、無理もない。私がほぼジョナサンに付きっきりだからだ。

「キス、してやろうか」

そして優しすぎるキスをジョナサンにする。

もう少し、もう少し。

この幼き子が私を導き、照らしてくれる一番星になるまでは。

 
 


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