ジョナサン「つまり、ディオが悪いんだね」
※パロディ
※花ジョナ、ジョセジョナが含まれます

 

ジョリーン。正確にはサイコセラピーマシン。別名は徐倫。不眠に悩まされているのは大体夢のせいだと踏んでいる我々が開発している真っ只中のマシン。

「ジョリーン、明日は」
「お大事に。…やれやれだわ」

名刺にはご丁寧に唇のマークまであるのを、スピードワゴンは受け取る。全く不思議だ。あのマシン…否、徐倫という人は。そうやってスピードワゴンは、耳にいまだ残っている機械の感触を触った。

「ツェペリさん、今帰りました」

紹介が遅れたが、徐倫は正確に言うと、肉体はなく幽霊に近い機械なので、誰かに乗り移らないといけない。その本体が、ジョナサンなのである。ジョナサンは研究所の中で、抜群に徐倫との相性が良かったので、相棒同然だ。そんな徐倫は鏡やガラスに時々ふらりと出てくるのは、やはり幽霊みたいだと思う。

「お帰り、ジョナサン」

ツェペリさんから掛けられた、優しい声に思わず笑みが零れる。この研究所の所長は、いつも優しい物腰で対応する。

「今日は刑事のスピードワゴンさんでした……ふわぁぁっ…」

伸びをしながら、セラピーを施した相手の名前を告げる。流石に1日に何回も寝てれば疲れる。

「お帰りなさい、ジョナサンさん」

眼鏡を着けた花京院がふんわりと笑う。花京院は、ここの研究者のジョセフと並ぶ最古参だ。ジョナサンのナビゲーター役もしている。そしてジョナサンに惚れている事は研究所内で『ロミジュリ』として、とても有名になっている。

「俺の作った徐倫の様子はどう?ジョジョ?」

同じく研究者のジョセフが、僕に勝手につけたあだ名で呼ぶ。このあだ名は何故かジョセフしか言わないが。
因みに徐倫を開発したのは彼だ。その理由は、『同じ夢を友達と一緒に見れたら楽しいじゃん?』とした単純な動機で、サイコセラピーマシンという大変な物を作ったのだ。

「変わらないよ。まぁ、徐倫の感覚には慣れないけどね」

もちろん夢なので、そこにあるものになることが出来る。例えば夢によって様々だが、妖精や、西洋人形、人魚姫になどの格好もしている。正にコスプレ。そんな感覚に時々笑ってしまう。

「でも可愛い徐倫の格好を見れて嬉しいよーん」

ジョセフが冷やかす様に言う。瞬間徐倫に乗り移られたジョナサンが、オラァと叫びながら、ジョセフに殴りかかる。

「嘘だって!ごめん!」

砕けた床に戦きながら、ジョセフはただ、ジョナサンから逃げるしかなかった。

お昼は少しだけ時間が経ってからだ、とツェペリは苦笑いをした。

 
「で、あのジジイが開発を打ち切れって言ってるの……意味分からない」
「……うわっ!辛いよ徐倫!」

そう言いながら徐倫が、頼んだ坦々麺を啜る。そして頭にきたのか、ジョナサンと入れ替わるとジョナサンは、辛さに驚く。

「まぁーったく、このジョセフちゃんの天才的な機械が分かっていないかしらァン!」

憤慨しながらも、ジョセフはうどんとハンバーグセットをとても速い速度で食べる。これだけ食べて太らないのが不思議だ。

「まぁ落ち着いて二人とも。別に完全終了じゃないから…でも」
「猶予はあったとしても、徐倫は完成に近いが、まだ完成していない。これだけでも、上層部の機嫌を損ないかねない。………そうですよね?」
「そうだ。しかも、サイコセラピーマシンに関わってる者たちは、決まって悪夢を見てしまう」

「……だいぶ痛いところをつつかれてますね」

花京院がはぁとため息を零し、ポテトを口に運ぶ。
ジョナサンは喉を潤してからことんと、飲み物のグラスを置く。

「……その悪夢ってなんですか?ツェペリさん」

「家具家電、カエルのオモチャなどが行進をしていて、必ず夢を見ている人は、右手を上げている大量の人形の中に王様の様にいる」

「なんか分かりにくいな」

「じゃあ研究所に戻って、その悪夢を見ている人に入り込んで映像を見るとしよう」

そう言って、ジョナサンとジョセフは席から立ち上がった。

研究所に戻ったジョナサンは、最近見なくなったはずのシーザーという研究者が簡素なベットに寝かされているのを見る。

「シーザー…!」

ジョセフが驚きでひっくり返った叫び声を上げる。ジョナサンはそんなシーザーを見て、心が痛む。
なぜなら体は包帯だらけで、自慢の整った顔には生々しい傷があるからだ。なんでも自宅のマンションの踊り場から、鏡をぶち破り、投身自殺を試みたそうだ。――――――理由は、どう考えても夢関係だ。

花京院とツェペリは黙ってモニターを見ている。そこには、説明した通りの光景が映しだされていた。

「夢を植えつけられている…?」

夢を植えつけられた、とジョナサンは踏んでいるようだ。

「きっとシーザーさんは患者を治療中に――――――」

「DCミニを経由して侵入された。そして、気づかぬ内に夢を投写された…」

「でも、それは――――――」

「犯人も同じ悪夢を見続けなくてはならない」

捨て身のテロだ、とジョセフは呟いた。

「テロはみな捨て身ですよ」
そう言って花京院は、ふっと短く笑った。

「あ、そうだシーザー君の容態は?」

「脈拍共に全て安定しています」
ピッ、ピッと機械独特の音がかすかに聞こえた。乱れてないのは嬉しい。そして犠牲は最小限に抑えたいのだ。彼は事実、ジョナサンのブレーンだったからだ。故に彼がいなくなったらどうなるかわからない。しかし今彼は生きている。こうやって心臓が動いている。それだけで少し安心したジョナサンは切り詰めていた息を吐きだした。

その時、モニターの日本人形が甲高い声で囁き始めた。それがあまりにも小さく、耳が良いはずのジョナサンは眉間に皺を寄せる。本体の音量を上げ、なんとか聞こえるようにすれば、ジョセフ達がモニターに向かって顔を突き合わせる。

「真昼の空が登るとき――――――」

日本人形の顔が歪み始め、徐々に見知った顔になっていく。ああ、この顔は、この顔は、紛れもない花京院君の友人のポルナレフだ。最近休んでいたと思っていたらこうなっていたのか。

「夢にポルナレフが…!?」
花京院が驚きの声を上げる。

「ポルナレフはどこ!今すぐ行くよ!」
なぜか頭の中にひどく懐かしい義兄弟を浮かべたが、今はそんなこと気にする必要はなかった。なぜなら、研究者の友人を助けたかっただけだった。


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