※臨子静
きっかけはと繋がっていますがこの話だけでも読めます


ピンポーン

「はい?」
「おれ!いざや入れて」


――…数日前、泣きながら下校している静雄を見つけた臨也は一度、自分の住んでいるマンションに呼んで相談に乗ったことがある
その際に静雄は臨也に何時でも来たいときにマンションにおいで、と言われていたので今ではほぼ毎日のペースで臨也のもとへ出掛けていた

「やぁ、シズちゃんいらっしゃい」
「今日も遊んで行っても大丈夫?」

大丈夫だよ、と返事をすると嬉しそうに笑う静雄に臨也は頭を撫でてやる

「んんっ」

頭を撫でられ目を瞑る静雄を見て犬みたいだと臨也は思った
会ったばかりの頃に比べすっかり臨也になついている

「シズちゃん、今日も学校の話を聞かせて?」

これはいつも静雄が来る度に聞く事であってこの日も静雄に、いちごみるくを差し出しながら尋ねた

「んー、今日もとくに何もなかった、いつも通りだった」
「…そう」

いつも通りだ、という割には俯き加減で話している
「いつも」なら顔を見て話すのに

少し違和感を覚えた臨也は気になったので探ってみる事にした

「シズちゃん、シズちゃんが話したくないらなら話さなくてもいいけど言いたいことがあるならちゃんと俺に聞かせて?」
「うん、でも本当に何も無かったから」
「じゃあどうして、そんなに泣きそうな顔してるの?」
「…………」

下唇を噛みしめながら泣くのを堪えているような仕草をしている静雄に小さく笑い、腕を広げて優しい声で話しかける

「シズちゃん、こっちにおいで」
「……で、も」
「大丈夫だよ、だからおいで?」

素直に甘えることを躊躇う静雄に尚も優しい笑顔と声で自分の腕の中へ誘う
その笑みを見た静雄は自分の服の裾の方を握りながらゆっくりと臨也に近寄る

「いざ、やぁ、っグス」
「我慢しないで?少しずつでいいから泣いてる理由を教えてよ」

臨也の元へ行くと安心し、しがみつきながら声を押し殺して泣く静雄の頭を撫でるが、静雄は顔を横に振るばかりで話そうとはしない

「シズちゃんが泣いてると不安だよ」
「ン、グス…」

言いたくなければ言わなくていいと言ったのに我ながら矛盾してると思ったが流石に泣かれてしまっては心配だ

それから10分ほど経ちやっと少しずつ話せるようになった静雄は詰まりながらも今日のあった出来事を話す

静雄の話をまとめると、どうやら弟の幽や両親まで化け物扱いされてしまったらしくそれに怒り机を投げつけてしまったらしい
幸いにも机は当たらず事故にはならなかったが先生には怒られてしまったそうだ

「、っおれの事はいいけどっ、幽のことま、で言うから、つい…」
「そうだね、シズちゃんは全然悪くないよ」

臨也は立ったまま抱き締めて頭を撫でる
ふと、静雄が顔を上げ不安な顔をしながら言いずらそうに言った

「もし、いざやがおれといる所、見られたらいざやも何か言われるかも」

おれといない方がいいかも、と呟きながら下を向く

そんな不安を消し去るように臨也は先程よりも強く抱き締めた

「そんな事言わないで?俺はシズちゃんと居たいから」
「でも嫌なこととか言われるかも」

臨也にとって見知らぬ小学生に何を言われた所で全然関係無かったが、静雄が心配してくれることが嬉しかった

「大丈夫。それよりもシズちゃんに会えなくなるほうが悲しいよ」
「、なんでおれに、そんなに優しくすんの?」

「シズちゃんを愛してるからだよ」

膝立ちになり、静雄に目線を合わせてから手を握りしめて言う
最も、膝立ちすると静雄を見上げる形になるのだが構わない

愛してる、それは臨也が初めて静雄に話し掛けた時に言った言葉で、そして今もあの時と変わらぬ気持ちで臨也は伝える

「っ」
「シズちゃん顔、真っ赤だよ」
「うるせぇ」
「可愛い」

可愛いと伝えると、静雄の胸の辺りに顔埋め抱き締める
少し速い心臓の音が聞こえてきて何だか臨也自身まで恥ずかしくなってくる気がした


「…シズちゃん、キスしたい…いい?」

顔埋めたまま聞いた臨也に静雄からの返事がなく不思議に思い顔を上げてみると顔を赤くして下を向いている静雄と目が合う

「キスしていい?シズちゃん…」
「……うん」

消え入りそうな声の返事を聞くと臨也は静雄の顔を包む様に手を添えて優しくキスをする

「本当に可愛い…」
「だから、可愛くないって言ってんだろ」

恥ずかしいのか唇を離すとすぐに急いでいちごみるくの入ったコップを手に取りソファに座ってしまったので臨也はその隣に座る

「もう可愛いとか言うなよ」
「何で?キスしてるときはもっと可愛いのに…」
「ブフッっ、そういうこと普通に言うな、それにおれは男だから可愛いとか言われても」

そう言って溢してしまったいちごみるくをハンカチで拭き、再びいちごみるくを飲む姿はやはり可愛い以外の言葉では言い表せない

「もう一回してもいい?」
「えっ?…!!…っん」

静雄の返事を聞かずに手からコップを取りテーブルに置くとまた唇を合わせる

「…っふんッ…んん……いざっ」

今度はさっきよりも長く唇を合わせている
息苦しくなり離してほしいと臨也の胸を叩くが離れる様子がなく、むしろソファの背もたれに頭を押し付けられるように口づけた

息をするべく口を開けると見計らったようにぬるっと臨也の舌が静雄の口に入ってくる
初めての感覚に戸惑いながら舌を引っ込めてしまうが逃げても逃げても臨也の舌に絡め取られてしまう

「ふぁ…んっ……は」

やっと静雄は臨也に応えようと自ら舌を絡めるが頭の中がくらくらして思うようにできないでいると
ふいに、臨也によって繋がっていた唇同士が離れる
唇が離れる最後に静雄の唇を舐めながら。

「………っ」
「シズちゃん、…ごめん、嫌だった?」

完全に下を向いてしまって表情が見えない
その様子に臨也は少し焦った

「ごめん、シズちゃん」
「謝んな、別に嫌じゃなかったし」
「よかった…、俺嫌われたかたと思ったよ」
「おれよく、わかんないけど…」
「なに?」

言いかけたまま止まっている静雄を急かすように問う

「おれ、いざやの事、す、好きかも…」
「!!本当に!?シズちゃん、俺、凄く嬉しい!!」

今までに見せたことの無いくらいのテンションで大袈裟なくらいに喜ぶ臨也を見て、静雄は少し慌てる

「ま、待てよ、だからおれよくわかんないんだってば」
「じゃあ、何で好きかもって思ったの?」
「いつもと違うキ、キスされても嫌じゃなかったし、しかも何か変な気分になって…」

もう、わかんない!と言うと立ち上がり玄関へ向かう

「え!まだ話の途中だよ?帰っちゃうの?」
「もう、何かわかんないから今日は帰る!」
「そっか…明日も来てくれる?」
「…わかんない!!」

そう言って玄関を飛び出す静雄の顔が真っ赤だったのは気のせいではないはずだ

「最後の方、ほとんどわかんないばっかだったな…」

呟き小さく笑いながら玄関の鍵を締めると部屋に入りソファに座る
ソファの前のテーブルに目をやると先程まで飲んでいた、いちごみるくの飲みかけの入ったコップとその横に、『へいわじましずお』と書かれたハンカチが置いてあった

おそらく、いちごみるくを溢したときに拭いて置いていってしまったのであろう
それを手に取り臨也は口角を上げてにやりと笑う

「明日も来てくれるかな」

臨也は確信を持った疑問形の言葉を呟いた



END
(あ!ハンカチ忘れた!)
***
(ハンカチにちゃんと名前書いてるんだ…)



―――
臨子静、第二段!!
んー、やっぱり泣いてる静雄は萌えます、名前が書かれたハンカチを持っているのは物凄く萌えます
主観的萌えで入れてみたけどあんまりいかせてませんね…







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