風邪っぴき


あれ、喉痛いかも。
と思ったのは今朝。

あれ、頭痛いかも。
と思ったのはお昼。

あれ、なんかグラつくな。
と思った時、意識を手離した。

それは、5限目の体育の時。



「ふにゃ、」

目を覚ませば、薄い消毒液の匂いがして、ああ保健室かと納得して。

今日運んでくれたのはきっと豪炎寺。だって私は豪炎寺のジャージを握り閉めていたから。

なんでジャージを握っていたのかは分からないけど、運んでくれた時に私が離さなかったとかの理由だろう。

のそのそと起き上がって、辺りを見渡せばメモが1枚見つかる。

――保健医の先生主張。俺が迎えに行くまで寝てろ。

書いた人の名前も、誰宛かも書いてなかったけど、保健室にいるのは私だけだから私宛なのは間違いない。

書いた人は同じクラスだろう。秋ちゃんや風丸ならもっと優しく書くし名前も書くだろうから、鬼道か豪炎寺か円堂。円堂は、ないな。こんな綺麗な字じゃない。

ならば鬼道か豪炎寺だけど、分からない。ま、迎えに来れば分かるだろうからいいや。

あ、でも運んだのが豪炎寺なら豪炎寺かな。

素っ気ない文章をなぞりながら考えていると、ガラッとドアがあく。

「河野、大丈夫か」

予想的中、豪炎寺修也だ。

「…まだ頭痛い」
「熱が38度もあればそうだろう」
「…もしかして豪炎寺が計ったの?キャーへんたーい!」

と、わざとらしく言えば豪炎寺に小突かれる。

「いつから体調悪いんだ」
「…朝からかも?」
「なら最初から休め」
「うー平気だと思ったんだもん」

頬を膨らませて言えば今度は頭を撫でられる。

「後1時間だが、早退するか聞いてこいと言われた」
「早退しない」
「言うと思った」

じゃ6限目が終わったら迎えにくるから寝てろ、と言って豪炎寺は保健室を後にしようとした。

「あ、ジャージ!」
「ああ、」
「寒かった?ごめん」
「平気だ」
「ありがとう」

笑顔でお礼を言えば、もう一度頭を撫でられた。

なんか、落ち着くかも。


豪炎寺が出ていくのを確認してから、私は再び眠りについた。




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