モテる男たちと私 雷門中にもだいぶ慣れてきて、サッカー部の皆とも仲良くなった今日この頃。 今日のご飯何かなー、なんて考えていると河野さんちょっといい?、と3年生の先輩を中心に10人以上の女の子に呼ばれた。 俗に言う、体育館裏の呼び出し? 「何の用ですかー?私、これから英語のプリントを鬼道に押し付け…手伝って貰おうと思ってるんですけどー」 「その鬼道様の事でお話があるの」 ワォ、鬼道様だって。後輩に様付けはどうなんですか、縦巻きロールの古いお姉さま。 「じゃ、鬼道じゃなくて風丸にしますー」 「風丸君もね、」 「じゃ豪炎寺ー」 「そう、やっぱりお話しが必要ね」 「えー、だって他の人で誰が英語を教えてくれるんですかー?夏美は自分でやれって言うし、秋ちゃんは数学頑張ってるし、春奈ちゃんは年下だし、他の女の子に聞くのは可哀想だし、他は馬鹿ばっかりだし」 だから鬼道か風丸か豪炎寺が良かったのに。 そう呟くと、縦巻きロールの横にいた女の子に頬を叩かれる。威力は無いが地味に痛い。 「貴女、転校生のクセに生意気なのよ!」 「先輩、馬鹿ですか?転校生じゃなくて、転入生ですよ」 「…屁理屈言わないで!」 「すみませーん」 ヘラッと笑うと先輩や他の女の子は更に気を悪くしたらしく、皆顔を真っ赤にしている。 「木野さんはね、いい子だし」 「あー、秋ちゃんはスッゴい優しい子ですもんね」 「それにマネージャーも頑張っているから」 「ええ」 「音無さんは鬼道様の妹ですし」 「妹じゃなくても可愛い子ですー」 「雷門さんは理事長の娘」 「知ってますー」 だから、何でもない私が気に入らないんだろうけど。 「でも、私選手ですし」 「…鬼道様に関わらないで」 「無理ですね」 「鬼道様や風丸君、豪炎寺君も迷惑してるわ」 「誰が迷惑してるって?」 あ…。まじで漫画みたいなナイスタイミングでヒーロー登場? 「鬼道、様っ!」 「豪炎寺君…風丸君…」 「河野を離して貰おうか」 「河野、おいで」 凄む鬼道と豪炎寺とは反対に、笑顔なのは風丸。 正直、風丸の笑顔が1番怖い。 私は風丸に呼ばれるがまま、風丸の腕を取る。 「河野にまだ文句がある奴はいるか?俺達が聞こう」 そう、鬼道が呟くと先輩達は慌てて逃げる。 私はそれを見ながらため息をつく。 「ありがと」 「お前は無駄に挑発して物事を大きくするな」 「挑発したつもりは無かったんだけどね」 「河野、」 「あー、気持ちいい…」 豪炎寺が冷やしたタオルを頬にあててくれる。 「河野、悪い」 「なにが?」 「俺達が原因だろう?」 「あーそうですよ。モテる男は大変ですねー」 と、嫌味をたっぷり含ませて言えば3人は黙ってしまう。 それを見て私はケラケラ笑う。 「鬼道、アイスで許してあげる」 「…それくらいでいいならいくらでも奢ってやる」 「豪炎寺、私英語のプリント終わってない」 「…俺の写していい」 「風丸、殴られてほどけた髪を結わいてくれる?」 「…ああ」 「じゃ、一見落着ね!」 とびっきりの笑顔で3人に向けば3人も笑顔を返してくれる。 ごめんね、先輩達。 [*前] | [次#] |