※秋ちゃん視点、高校生

豪炎寺くんと名前ちゃんが付き合っているのは有名なこと。2人は中学生の頃から付き合っていて、その仲はその辺にいる夫婦よりもお互いを理解しあっていてお互いを信頼している。先輩後半同級生、はたまた先生や保護者関係なく2人の関係を知らない人はいないんじゃないかという程。

ある日、野次馬根性丸出しの女の子たちが名前ちゃんに問い詰めたのが事の発端で、「豪炎寺くんとはどこまでいったの?」という質問に名前ちゃんは「普通だよ」と答えていた。勿論女の子たちがそんな答えで満足する筈もなく、「キスはしたよね?」「豪炎寺くんの部屋って行ったことあるよね?」「高校生なんだからやっ…」などと名前ちゃんの机を囲んで聞いていた。

名前ちゃんはそれに答えずにただ笑みを浮かべていた。その笑みがなんだかあまりにも魅力的だったので私は同性にも関わらずドキッとしてしまった。周りの男の子たちは顔を赤くしたり俯いたり、わざと名前ちゃんから視線をはずしたりしていた。

教室の角の席に座って円堂くんと話している豪炎寺くんを見ると目が合いニヤリと笑われた。そしてそれがまた名前ちゃん同様にとても魅力的だった。

それから、名前ちゃんと豪炎寺くんの視線が絡み合って互いに何かを口パクで伝えていた。私には何を言っていたのか分からなかったけれど2人があまりにも綺麗に笑うので私は思わず赤面してしまった。

先程まで名前ちゃんにいろいろ聞いていた女の子たちは豪炎寺くんと何かを伝えている名前ちゃんを見ると何やら思案したようで、ぽつりと呟くように名前ちゃんと豪炎寺くんに質問をした。

「名前ちゃん、豪炎寺くんの事好き?豪炎寺くんも、名前ちゃんの事好き?」

名前ちゃんと豪炎寺くんは質問を聞くとぱち、と瞬きした。何を今更そんな質問を、と周りは思ったがなんだか聞いてみたい気もした。

「「好きじゃない」」

その答えはいろんな人を驚かせたけど、私は驚かなかった。円堂くんも笑っていたし同じクラスにいる風丸くんも笑っていた。それから、ならなんで付き合ってるの、と聞かれた2人は人差し指を口に当ててこう答えた。

「「秘密」」

そう答えた時、授業開始を知らせる鐘が鳴ったので2人の答えの真相を知る人はいない。けれど、多分あの2人の言いたかった事は分かる気がする。私だけでなく、あの2人を見てきた人なら皆分かるだろう。

あの2人は好き合っている訳ではないし愛してる訳でもない。ただ、お互いがお互いを必要としてお互いに支え合っているのだ。どちらかが欠ければ羽ばたけない鳥の羽根のようにあの2人は2人で1つのようなもの。
あの2人は一言では言い表せない深い所で繋がっていて誰も壊せない関係を持っているんだと思う。



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