「綱海先輩とみょうじ先輩って付き合ってるんですか?」

部活が終わって帰宅しようとすると1つ下の学年の後輩たちに囲まれて聞かれたのはもう幾度となく聞かれた事で私と綱海の返事は決まっていた。

「付き合ってないよ。だけど、綱海は私の特別なの」
「俺にとっても名前は特別だな」

それを聞いた後輩たちは例によってとぼとぼと帰って行った。私たち、別に付き合っていないのに。

「私たち付き合ってないんだから告白すればいいのに」
「んな事されりゃ俺が断らなきゃならねーだろ」
「付き合ってみればいいじゃん」
「お前まじで言ってんの?」
「冗談に決まってんじゃん」

私も綱海も怒ったり意地になる訳でもなく、淡々と話す。私たちは付き合っていない。けれど、他の人と付き合う事もない。

リカや春奈ちゃんや木暮くん、染岡には早く付き合えと言われた。まあ、言われる理由も分かるけど。

「名前」
「…んっ」

私たちは手を繋ぐ。恋人繋ぎは当たり前。私たちはキスをする。フレンチだけでは済まないのも当たり前。キス以上の事もしている。

だけど、好きだと言った事言われた事はお互いにないのだ。

他の人に話す時も特別だから、と言うだけで好きだと言った事はない。

言えば関係が変わる事も分かっている。なのに言わないのは私たちが臆病者だからだろうか。

「なあ名前」
「なーにー?」
「…一歩進まね?」
「…今更だけど、ね」
「今更って言っても進まなきゃならねーだろ」
「まーね」

臆病者では無かったらしい。手を繋いでキスから始まったこの関係。順序がおかしいがきちんと前へ進むらしい。

「名前、好きだぜ」
「私も好きだよ、綱海」



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