「さみっ…」
「寒いってもう四月ですよー先輩」
「四月でもさみーんだよ」
「財布がですかー?」
「そうなんだよなーって、おい!」

雷門中の近くの桜並木を綱海先輩と歩く。桜はもう満開で春の訪れが目に見えて分かるのに隣の綱海先輩は雷門ジャージにマフラーをしている。

「まあ、先輩は沖縄出身ですからね。寒さには弱いですよね」
「まーな」
「なのに冬でもサーフィンとか綱海先輩はバカですよね」
「そんなの海の広さに…」

円堂のサッカーバカに負けないサーフィンバカの綱海先輩はいきいきとした顔でサーフィンの魅力について話してくる。私はそれに適当な相槌を打ちながら今日の夕飯は何かと空っぽな私の胃と相談する。

「…聞いてるか、名前!」
「聞いてないです」

夕飯について考えてました、と言えば聞けよなと小突かれてから綱海先輩は腹減ったーと叫んだ。

「なあ、」
「なんですか?」
「寄り道してかね?」

と、綱海先輩が指差すのはコンビニ。そういえば肉まんがそろそろ終わりのシーズンだ。私は二つ返事で賛成した。

「…ん」
「どうも。…どうぞ」
「サンキュ」

コンビニで肉まんと餡まんをそれぞれ購入した私たちはそれぞれを半分にして相手に渡す。一つ分の値段で二つの味を食べられるから半分ずつにするのは綱海先輩と私のお決まりの事だった。これが最後かと思うと少し寂しい。

「…名前、」
「はい?」

綱海先輩が左手で私の頭を撫でる。私はそれに不思議そうに返事をした。

「肉まんは最後だけどな」
「はい」
「今度はアイスを半分にすっか」

な?、と笑う綱海先輩に私はとびっきりの笑顔を返した。


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