2010年12月23日、私の闘いは始まったのだ。この寒空の下、ひたすらチキンを箱に詰めたあとは半袖にパーカー1枚という薄着で外に立たされた、私と豪炎寺。

「いらっしゃいませー、特別な夜に特別なチキン!今日から3日間お得な価格でチキン販売行なっています!いかがですかー」

声をはらして目の前を何もないかのように通り過ぎるおじさんおばさんに声をかける。

冷たい風が体を多い、思わずしゃがみこみたくなるが堪えて笑顔を作る。

ちら、と隣を見れば無愛想ながらも若干微笑みチキンを販売している奴の目の前には目をハートの形に変えた中学生やら高校生がチキンを買っている。

大人に大量買いをして貰うが数が少ない私と多くの学生に少しずつ買って貰う豪炎寺の売上は同じくらいだ。

頑張りは私の方が上だが、元々人目をひく豪炎寺に嫉妬しても何もならない。そもそも今日此処に豪炎寺がいるのは私が無理矢理手伝いを頼んだからだし。

「寒い」
「大丈夫か」

一区切りした所で私たちは休憩に入った。ぼそりと呟いた私の言葉に豪炎寺は心配そうに返す。

「大丈夫じゃないけど大丈夫。明日も明後日もだし。豪炎寺は寒くないの?」
「寒くないと言えば嘘になるが、普段から半袖でサッカーしてるからな」
「そっか、そうだよね」

動き回るとはいえ普段から半袖半ズボンで外に長時間いるのだ。慣れとは恐ろしい。

「でもごめんね、せっかくのクリスマスなのに3日間とも手伝いして貰って」
「いや、練習は休みだし問題ない」
「…一緒に過ごしたい相手もいるでしょ。ごめんね」

申し訳なさそうに言うと、豪炎寺は目をぱちりと瞬きして言った。

「一緒にいたい相手がいるからこうして手伝いとしてでも一緒にいるんだろう」

お前でなかったら手伝いはしない金に困ってる訳でもないしな、そう言って私の頭を撫でた豪炎寺。

「なっ…!」

勿論私が顔を真っ赤にしたのは言うまでもない。

休憩が終わるまであと25分。

…好きだと告げて25分間はバイト同士でなく恋人同士として過ごそうか。


end

20101223


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