まだ肌寒い気候が続く今日もアイツは海にいる。蒼い波の間から時々見える桃色の頭に私は叫んだ。

「つーなーみーっ!」
「なまえっ!」
「ちょ、危な…って」

こっちを見た綱海の後ろからは大きな波。私が危ないと叫び終える前に綱海はサーフボードから落ちた。珍しい。

「大丈夫ー?」
「おう!」

海からあがってきた綱海はいつものように太陽に負けない笑顔を私に向けた。

「どうしたんだ?」
「音村くんが呼んでるよ」
「いっけね、忘れてた」

私はタオルで綱海の頭をガシガシと拭く。綱海は頭を極力動かさないように着替えを始めた。いつもの私たちの光景。

「まー女の子の前で着替えるなんて綱海は変態だね」
「その着替えを普通に見てるのはなまえだろ」
「そうだけど」

今更だよね、と言えば綱海は笑った。私たちは小さい頃から一緒にいるからいつも一緒、なんでも一緒。着替えくらい何てことはない。

「でもな、なまえ」
「んー、なに?」

俺だって男なんだぜと綱海は私の唇を奪った。それに私は笑うだけだった。
「私が女で綱海が男なのも昔からでしょ。私も綱海も女だったりしたらここまで一緒にいたりこんなことしないと思うし」

そう言うと、綱海は相変わらずの笑顔で頷いた。私はその笑顔を見ながら私の左手と綱海の右手を繋いだ。

「音村くんに怒られるよ」
「やべ、急ぐか」

私たちは手を繋いだまま走り出した。目指すは大海原中!


end

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