「痛いっ」
「あれくらいでか」
「運動部の修也と一緒にしないで」

満月が窓から歪んで見えるのは私の目を涙が覆っているからで、涙は別に悲しいとかでなくて。

ただ単に、筋肉痛。

普段、運動という運動をしない私がバスケをした、という所に間違いがあったらしい。何故バスケをしたかとかの経緯は省くとして、バスケを終えた頃には既に体が言うことを聞かずに動かなくなったので修也に迎えを要請した。

修也は修也でサッカーをした後らしいが、もう練習ではそう簡単に筋肉痛になる体ではないらしい。(流石、現役サッカー部)

修也におぶされたり抱えられたり迷惑をかけて何とか家まで到着した。で、只今修也にストレッチを兼ねたマッサージをして貰っているのだが、これがまた痛いのなんの。

「修也っ、もっと優しくしてよ!」
「十分軽くやってるが」
「もっと優しく!」

私の我が侭は今に始まったことではない、と言うかのようにため息をひとつして先程までよりも手つきがゆっくりになる修也。

「しゅーやー」
「なんだ」
「部活楽しかったー?」
「まあな」
「あー、円堂くんがいるんだっけ」

そりゃ楽しいよね、と言えば修也は笑っていた。今、修也がサッカーをしているのは円堂くんのおかげだもんね。

「ごーめんねー迎えに来て貰って」
「悪いと思ってないだろ」
「うん」
「…はあ、」

少し手に力をいれた修也と、再び痛いと騒ぐ私はもう何年もの付き合い。

いっつも私を助けてくれるのは修也って決まっている。

「っ、痛い」

こうしてマッサージしてくれるのも修也だけ。

「修也、ありがと」
「…ああ」

それから、帰ってきたお父さんに痛いと騒ぐ私と、一緒にいた豪炎寺に誤解をされたのはまた別の話。

* * * *
筋肉痛は私です…
2010.03.07


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