ブラック兄弟です

「……」
「……」
「よく似合ってるよ二人とも!」

 今日も若々しくイケメンオーラというかイケメンな父さんはアハハと楽しそうに笑った。そんな父さんに反し俺と兄さんはなんともいえないような、できれば今すぐこの場から脱走したい気持ちでいっぱいだった。
 父さんが着ているのは黒いスーツに黒い長ったらしいローブという全身黒ずくめ。長髪気味のグレーの髪は珍しく今日はサイドで一つに結んでいてすごく似合っていた。長髪が許されるのは外人顔のイケメンだけだよなあ。前世の俺がやったらただの不潔なキモオタだもんな。せっかく父さん似のイケメンに俺も生まれ変われたんだし俺も将来父さんみたいにしてみたいなと思った。
 しかし今の俺らの服装はなんなのだろうか。お揃いの白いワイシャツに黒い半ズボンにサスペンダー。それプラス黒いネクタイで兄さんはいいとこのぼっちゃんオーラビンビンだ。俺は兄さんがネクタイなのに対しリボン。それに母にハンチングを被せられて(兄さんは嫌がって脱いだ)なんだか童話にでてくるような少年スタイルだ。兄さんは子供ながらにかっこいいって感じだけどどうして俺はかわいい風なんだよ。俺もネクタイにしてくれよ。確かに俺は成人式もまだだったし高校の制服のネクタイはパチンととめるだけの簡単楽チンネクタイだったからネクタイの結び方なんて知らないけどさ! 大学の入学式の時は赤坂に結んで貰いましたが何か! 解けたーといってネクタイ結びにしてもらおうと胸元のリボンを少し引っ張ってみたら母に睨まれたのでやめた。少しいじけて下を向いてたら父さんに「レギュもかっこいいよ」とにこにこ笑いながら言われ頭を撫でられた。いじけるなんて26歳(中身)にもなって恥ずかしい。いや26歳(中身)の大人がリボンにサスペンダーをつけてるほうが恥ずかしい。もうやめて俺のライフはゼロよ!

 そもそも何故俺がこんなにも羞恥なことをやらされる嵌めになったのか! 記憶は昨日の夜に遡る。夕食を食べ父さんの買ってきてくれたマイスウィートケーキを兄さんと食べていると父さんがぽつりと呟いた。

「あのな二人とも。少し頼みがあるんだが、」
「どうしたの?」
「ふぁあいふぉーふぁん?」
「レギュラス、ちゃんと飲み込みなさい」

 ケーキうめえ、とフォークでケーキをつつきながら父の話に耳を傾ける。俺はケーキにのった苺は最後までとっとく派だ。やっぱり大事に大事にとっておいて最後においしくいただくのがいい。少しずつ周りのスポンジと生クリームを苺を避けながら食べる。小さくなっていくケーキを惜しみながら食べるのが俺は好きだ。夢中で食べていると「レギュ、頬についてるよ」兄さんに言われ指さされた場所をこする。「とれたかな?」と兄さんに聞くと父さんがアハハと笑い俺の頬に指を当てた。「とれたよ」そういって指についた生クリームを口に含んだ父さんはなんだか色気満載でこの男本当に2児の父かよ、思った。

「お父さん頼みって?」
「私の友人というか悪友の家に一緒にきてくれないか?」
「「は?」」

 気が抜けたような兄さんと俺の声がハモリ父さんは苦笑いをした。友達の家にいくのに何故こんなに申し訳なさそうなのだろうか。父さんが頼み事なんて珍しいから何を言うかと思えば、その悪友の家にいくだけなら別にいいけど。今までもブラック家は純血名家の家だからパーティーとかに出させられたりして(もちろん母に強制的に連れていかれた)そういうのには一応慣れてる。思わず止めてしまったフォークをケーキに刺し口に運ぶ。兄さんの方を見ると兄さんも父さんがどうして困ったように苦笑いをするのかよくわからないようだった。まあ父さんが俺らに頼み事なんて珍しいし堅苦しいパーティーじゃなく父さんの友達の家に遊びに行くだけなら全然構わない。俺と兄さんが承諾すると父は何故かまたすまなそうに笑った。

 しかし考えはあまかったようでこの状況である。友達の家にちょっと遊びに行くどころではない。完璧なよそ行き用の正装だ。何故こんな正装をしなくちゃいけないかよくわからないが、とにかく慣れてると言っても堅苦しことが大嫌いな俺達ブラック兄弟は簡単に受けたことを後悔した。








ネクタイとリボン

母はいかないらしいが何故かはりきっていてその姿に俺と兄さんはため息をついた。

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