兄が好きなんです

「どうしてできないのですかっ!」
「っ…」

 母のヒステリックに喚く声がブラック家に響く。怒られてるのは兄さんだ。俺はクリーチャーと廊下からコソッと覗いて二人を見ている。

 ブラック家は純血で魔法界では昔からある結構な名家だ。ブラック家のある一室にある壁に描かれた家系図を見るとブラック家は本当に昔からあることがわかる。
そのためだからかブラック家の教育は厳しいものだった。食事のマナーやダンスレッスンなどいろんなことを厳しく教育されている。俺はともかく兄さんはまだ幼児なんだからほどほどにしとけよ…と思うけれど母はやめる気はなさそうだ。

 俺は幸か否か前世の記憶もあり精神年齢は成人を越えている。だから5歳児としてはかなり出来はいい方だ。
 けど兄さんはただの子供だ。いくら名家の子供といってもそりゃ人間最初は何もできないさ。1回で完璧にやれなんて大人だって難しいのに、それを子供に望みできなきゃ厳しく怒るなんて…。ブラック家はその名の通りブラックらしい。

 俺が純粋な子供でそんなことされたら確実にグレるね。そりゃあもう盗んだバイクならぬ盗んだ箒で夜空を飛び回っちゃうよ。俺は堪えられるけど兄さんはかわいそうだなあ。ていうか俺がアレなだけで兄さんは十分他の同年代の子供よりできてると思う。母は高望みしすぎだ。 叱るばかりで褒めなければ子供は育たないよ。兄さんがブラック家が嫌になるのも騎士団側に着くのもわかる気がした。

 ふと思ったが俺はどこの寮に入るんだろう。多分俺の性格からすればハップルパブだろう。消去法的に見ても、まず俺は勇気はあっても他人のために振りかざす正義なんて皆無だからグリフィンドールはないだろう。勉強は嫌いだからレイブンクローもない。ずる賢さは賢さがないからスリザリンも無理だ。つまり残るはハップルパブということ。
うん、一番平和そうでいいじゃないか。ハリーの生きる時代にもハップルパブは余り目立ったことはなかったし。強いていうならセドリックか…。
まあ俺には未来なんて関係ないし! やっぱりハッフルパフしかないかな。
でももしスリザリンに入ったら、兄さんは話しかけてくれなくなってしまうのかな。
いやいや! それは困るぞ! 原作では兄さんは家全体を嫌っていたから、もしかしたら俺のことも嫌ってしまうかもしれない。ついこの前原作なんて関係ねぇ! っと宣言したはずなのにそんなことを考えてしまう。どうやら俺は相当ブラコンなようだ。

 そういえばシリウスを兄さんと呼ぶのも大分なれてきた。6歳になった兄さんは成長が早いらしくにょっきにょき身長が伸びている。それに対して俺は周りの5歳児と比べるとかなり小さい方だ。元が日本人だからか俺は遅いのか? 外国の子供は成長が早過ぎる。目と髪の色を見ても兄さんや父さんと比べるとより黒っぽいし。せっかく外人に生まれたんだから金髪碧眼とかがよかったかも。

「お前はブラック家の恥だわッ!」

 よけいなことを考え現実逃避していた俺の意識を戻したのは母の兄さんを罵る大きな声だった。怒られながら目にたまった涙を必死に止めていた兄さんだったが母のその言葉に耐えきれず唇を噛みしめ涙をこぼしていた。
兄さんの涙と母の言葉にさすがに限度というものがあるだろうと思い俺はドアを開けた。クリーチャーの止める声が聞こえたが無視だ。

「お母様」
「レギュラス…」

 ぽつり、と兄さんが涙声で呟く。俺の名前を呼んだはずなのに俺には助けてといってるように聞こえた。

「お母様、兄さんは僕なんかよりよっぽど優れてます。今日はちょっと失敗しちゃっただけですよ。だから、そんなに兄さんを攻めないでください」
「……」

 母は何も言わなかった。きっとまだ怒っているのだろうけど俺はかまわず言う。

「そろそろ終わりにしませんか? クリーチャーが用意してくれたご飯も冷めてしまいますし。」

 にこっと効果音がつきそうな笑いを零し俺の真後ろのドアに隠れていたクリーチャーを見るとクリーチャーは少し照れたようなうれしそうな顔をしていた。母は相変わらずなにも言わなかったので俺はそれは許しだととることにして兄の手を掴んだ。

「いこ、兄さん」
「レギュ……」
「今日は兄さんの大好きなチキンだよ。ほら涙ふいて」

 兄さんの手にポケットから出したハンカチを握らせ、逆の手を引き部屋を出た。兄さんは俺と母を交互に見て戸惑っているようだったがやはりもう怒られるのは嫌なのか俺が手を引くとしっかりついてきた。体格差が少しずつでてきてシリウスがお兄さんになった。と思っていたけれどこうやって俺の後ろをついてくる姿を見るとまだまだだな、と思い少し顔が緩んだ。

「……レギュラス、ありがとう」

 後ろからぽつりと聞こえた声に振り向くと兄さんは泣いて赤くなった顔ではにかみながら笑っていた。あまりに笑顔がかわいかったので手を伸ばし兄さんの頭をなでなでしてみた。

「兄さんはかわいいね」

 そういうと兄さんは頬を赤くしながら「なッ! えッ!」と声を上げた。

「あはは、かわいいな」











そんな感じで生きながらえる











思わず顔がにやにやしてしまうのはご愛敬で許してください。

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