早く早くと願います

 コンコンと窓を叩く音が聞こえ振り返るとうちの梟、アレックがいた。窓を叩いたくちばしには1通の手紙が加えられていてそれをみた瞬間俺は悟った。

「ご苦労さん、アレック」

 小さなの頭を撫でてやるとアレックは満足したように飛び立ていった。アレックに手を振りながら手紙をみれば『ホグワーツ魔法魔術学校』の文字。やっぱりなあと苦笑いをし、羨ましいぜおいおいとため息を吐いた。
 母は作法やブラック家の在り方や魔法界のことは教えてくれたが魔法は教えてくれなかった。その代わりというか、父さんがたまに魔法を教えてくれてた。俺達にとって魔法とは小さな頃から見ているすごく身近なものだけど、実際自分で魔法を使うというのはやはり感動したものだ。初めて小さな羽を浮かせた時の思い出は今でも忘れられない。兄さんも俺も興奮しすぎてどっちが高くあげれるかなんて競ったりもした。他にも色んな魔法を父さんは教えてくれた。だから俺達は初歩的な魔法なら簡単に使える。けれど、やっぱり授業でちゃんとした教師に習うというのは違うものだ。前の世界はつまらない興味のない授業だったけどここは違う。ここには俺にとっての未知、魔法があるのだから。一足早く学べる兄さんを羨ましく思う。俺もあと1年なんだから、と自分を励ました。この世界に来て10年もたったんだ。1年なんてあっという間だ。




「兄さーん手紙来てたよー」
「俺に?ありがとな」

 部屋を覗くと兄さんは何やら本を読んでいて俺が呼び掛けると灰色の瞳をきょとんとさせていた。ホグワーツだってよ、と笑いながら言うと灰色の瞳は嬉しそうに輝いた。

「うわ、本物じゃん!」
「いいなあ。僕も早く行きたいよ」
「レギュもそろそろだろ?」
「うーん、でも羨ましい」

 ひょいっと兄さんの手元を覗き込めばシリウス・ブラック殿の文字。こんなに喜ぶ兄さんを見てしまえばやっぱり俺だって行きたくなってしまう。あーうーあー、と行き場のない思いをごまかすように視線を動かせば兄さんの読んでいた本が目に入る。

「『ホグワーツの歴史』?これ母さんが読めって言ってたやつだよね。兄さんが母さんから貰ったものを読むなんてめずらしいね」
「別にあいつが読めとか言ったからじゃない。俺が読みたかっただけだ」
「うんわかってるよ、ごめんね」
「……イヤミ言ってすぐ謝るってどうなんだよ」

 呆れたような顔をする兄さんに思わず笑ってしまった。別にイヤミを言ったつもりはなかったんだけどなあ。イヤミぽかっただろうか。

「イヤミに聞こえたならごめん。ただ兄さんが珍しく本を読んでるから、気になっただけなんだよ?」
「俺だって本ぐらい読む!」
「えー?そんな姿見たことないような」
「っ!レギュ、言うようになったじゃねーか…!」

 「汚い言葉使うと父さん困るよ?」と言うと兄さんは苦虫を噛み潰したような顔をして「わかってる!」と言った。母やブラック家が嫌いでも、兄さんも父さんは好きなのだ。父さんのあの眉を下げた曖昧な笑顔はあまり好きじゃない。困らせたくないという気持ちは俺達共通だ。

「珍しいことをするくらいシリウスはホグワーツが楽しみなんだろう?」
「っ!父さん!」
「おかえりなさーい」

 背後から聞こえた声に兄さんはびくりと肩を揺らして驚いた。俺はというと兄さんの正面にいたので父さんの姿には気づいてたのだ。だから会えて父さんの名前をだしたんだけど……兄さんが怖いから言わないでおこう。

「入学までに教科書とか揃えなきゃなー。休みを空けておくよ。一緒に行こうなシリウス」
「僕も行きたいなー」
「レギュは留守番してろよ」
「父さん兄さんがー」
「おいレギュ!」
「ははは、二人は仲がいいなあ」







あと少し









110704
レギュが喋るとき一人称「僕」になるのは母上様にそういうよう言われてるから(従わないとめんどい)
てかレギュのキャラが…



:#
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -