すごく意外でした

 兄さんから渡された薬を飲み俺はこの綺麗な庭に汚物を吐き出さなくてすんだ。どうやら薬は兄さんがクリーチャーから渡されたものらしい。さすがマイスウィートフェアリー、クリーチャーだ! 帰ったら仕事を手伝ってやろう。「ぼっちゃんはゆっくりしててください!」なんて慌てるクリーチャーもかわいいんだよなあ。しかし魔法界の薬はどうしてあんなにまずいのだろう。ぶどう味とかお子様用のものも作ってくれたっていいのに。魔法薬学を学んだら俺絶対開発しよ。きっとぼろ儲けできるはず。
 薬を飲んで気分が治ると人様の家の前で突っ立ってるわけにもいかない。ピンポンとかないの?ときょろきょろと探している俺に構わず父さんは杖をふり門を開け俺達の手をひいて入っていった。え?こんな簡単に入ってっていいの? 門を開けた向こうにはお城かと思うほどの豪邸と手入れが大変そうな綺麗な庭がある。どう考えても名家の家だ。確かにブラック家も家も庭も大きいけどこの家はそれ以上にでかい。ばかでかいといったほうがいいんじゃないだろうか。そんなお城のような家を呆然と見上げ戸惑っている兄さんと俺に構わず父さんは勝手に玄関扉をあけた(もちろん一人で開けれないほどでかい扉なので魔法でだ)。

「やあ大親友のオリオン!来てくれたんだ。歓迎するよ」
「…ああアブラクサス。いい家だね」

 中に入ると奥の階段にまるで来ることをわかっていたかのように長いプラチナブロンドをなびかせた父さん並に美形の男性がいた。この人が父さんの友達だろうか。なんだかテンションが高くフレンドリーな人だなあと思った。いつも微笑みを絶やさない父さんにしては珍しく少し頬をひくひくとさせていた。大きなパーティに出席していろんな人と父さんが話してる姿をみたけどいつも父さんは笑みを絶やさない。あれが父さんのポーカーフェースなのだろう。俺達の前で見せる優しい表情とは一辺こんな表情もできるんだと思った。

「紹介するよ。シリウスとレギュラスだ。二人ともこっちは私の友人、アブラクサス・マルフォイだ」
「初めまして、シリウスです」
「こんにちはマルフォイさん、弟のレギュラスです」

 父さんに紹介され兄さんは事務的な仕種で無表情に挨拶した。そんな兄さんに苦笑いして俺も後に続く。いろんなパーティに借り出される俺らはこいいう名家の人とハジメマシテの挨拶をさせられるのも慣れたものだった。兄さんはニコリともせず無表情で俺はいつも笑顔を絶やさない。対照的だね、と言われるが別に兄さんは普段から無表情のままじゃないし俺だっていつも笑ってるわけじゃない。なのに何故かそういう場面では決まりごとのようにそうしていた。これが母の教育のあらわれなのだろうか。別に兄さんも俺も母の話しなんてほぼ聞いてないのに。
 マルフォイさんは俺達の態度に満足したのか左手で兄さん、右手で俺の頭撫でた。そして俺らと父さんを見比べ楽しそうな笑みを浮かべた。

「礼儀正しいいい子達だなぁ。アブラクサスでいいよ。あぁ、長いからアブでもいいさ」
「はぁ」
「でも、見た目はそっくりなのに昔のオリオンとは大違いだな」
「……どういう意味だい? 私は昔から変わらないつもりだけど」

 アブラクサスさんがにんまりと人の悪い顔をすると父さんは何か嫌なことでま思い出したのか苦虫を噛み潰したような顔をした。咎めるようにアブラクサスさんを睨みつける父さんにアブラクサスさんは顔に掛かった髪を掻きあげながら「怖いなぁ」と笑った。なんだかどす黒い空気がアブラクサスさんと父さんの間に流れはじめる。俺と兄さんは早くも帰りたい気持ちでいっぱいだった。この数時間で兄さんと俺の気持ちはシンクロ率400%を越えているだろう。

「なぁ君達知ってるか? 今ではこんなに丸くなってるがオリオンは昔、」
「やめろお!!俺のいい父親像を壊そうとするんじゃねえ!!」

 え!?父さん? アブラクサスさんが話し始めると父さんは取り乱したように(ていうか取り乱してる)叫びながらアブラクサスさんに掴みかかった。しかしアブラクサスさんはひょいっと突進してきた父さんを避けニヤニヤと笑う。そんな二人にぽかーんと口を開けたままのと兄さんは固まった。父さんが「俺」?しかも口調が乱暴だし! あの優しくていつも温厚な父さんの変貌に驚きを隠せなかった。もしかして昔はやんちゃしてましたってタイプだったの!? いやうちの父さんに限ってそんな、

「そう怒るなよ。まだ何もいってないだろ? まったくオリオンは本当に短気で単細胞なんだから」
「ぶっ殺す!」
「いいのかい?君の子達ドン引きしてるけど」
「っ!!あ、違うんだよ二人とも!!」
「オリオンのばーか」








消し去りたい過去







闇の呪文らしきものを放つ二人に魔法使いも取っ組み合いの喧嘩とかするんだーと現実逃避した俺だった。

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