手は離しません

 どうにも気分は乗らず兄さんと二人無言でいると父さんにまた謝られてしまった。優しい父さんの困った顔を見ると何故か俺らの方が悪い気がして黙るのをやめて俺も困ったように笑った。兄さんはサスペンダーが気になるのか父さんに「外していい?」と聞くけど母に怒鳴られたため嫌そうな顔をして諦めた。そんな兄さんが少しおかしく父さんと聞こえないようにクスリと笑うがどうやら聞こえたらしく兄さんに睨まれた。

「レギュラスなんて女の子みたいじゃないか」
「!!」

 お、女の子だと!!酷い!リボンをつけてれば女の子という考えは今すぐやめるんだ!某おめざめテレビのKアナウンサーだってリボンじゃん!え?あれは蝶ネクタイ?しらねえよバカ! 勝ち誇ったような顔をする兄さんと落ち込む俺と楽しそうに笑う父さん。そんな三人を早くいけよみたいな目でみてる母。ブラック家は個性豊かですね。





「さぁ私の腕掴みなさい」
「姿くらまし?」

 兄さんの問いに父さんは「ああそうだよ」と答えた。姿くらまし…!あれって下手すると耳とか残したりばらけたりするんだろ?父さんはそんなミスをしないとはわかっているけど、姿くらましは気持ち悪いと聞く。ルーラ(ドラクエの呪文)みたいで楽だから早く成人して試験受けたいなあとは思っていたけど、いざやるとなるとやはり怖じけづくものだった。ああなんて悲しきチキンハート。こんなんだから彼女だってできなかったんだな……姿くらましの恐怖から何故か前世のしょっぱい思い出を思い出してしまった。

「二人とも初めてだったね」
「うん…」
「私がついてるんだから大丈夫だよ」

 キラキラーとイケメンオーラを振り撒きながら微笑む父さんに思わず見とれてしまう。なんでこの人はこんなにイケメンなんだ。きっと学生時代は両脇に女の子を抱え込みブイブイ言わせていたのだろう。イケメンってずるい。言うこともかっこいいんだもの。
 父さんの言葉に何故か納得してしまい俺は姿くらましをする決意を固めた。ジェットコースターだって最初はちびりそうになるくらい怖いと思ってたけど、1回乗ってみたらすげー楽しかったもんな。まあ吐いたけどな。無理矢理乗せた赤坂の楽しそうな笑みが目に浮かぶぜ。さあ父さんの手を握りレッツトライだ!

「じゃあいくよ?」

 父さんの声と同時に視界がぐるりと一辺した。うわなにこれ気持ち悪!ぐるぐると回り目の前がぐちゃぐちゃになり気持ち悪くて目をつむった。宙に浮くような感じがして足元がぐらいと歪み倒れそうになったけど、ここで倒れたら俺バラバラ!そんなのは嫌!と父さんの手を強く握った。





「ついたよ」
「……」
「二人とも大丈夫?」

 ゆっくり目をあけると大きな門の前にいて隣には父さん、その隣には兄さんがいた。ばちりと兄さんと目があうと二人とも無言で体も顔も無事か、残したパーツはないかお互いを確認した。どうやら無事成功したらしく二人でため息をつく。帰りもこれをやらなきゃいけないと思うと酷く憂鬱だった。そんな俺らの頭を撫でながら「よく頑張ったね」と父さんは言った。その手の温もりに俺生きてる!と実感して気が抜けたからか、気持ち悪さが一気に押し寄せてきて俺は思わず両手で口を押さえ付けた。









ただいま体











「ああレギュラス大丈夫かい!?クリーチャー早く!」
「レギュこれ飲め!父さんは落ち着いて!」
「おええー」

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