「お、廉造おかえり」
「ただいま、柔兄」

 玄関の方から聞こえてきた声にあたしはピクリと耳を動かす。気持ち良く寝ていたのに廉造が帰ってくるとうるさくて敵わない。あたしの一日はほぼ寝て終わる予定なのに廉造に絡まれるとその予定はもうぐちゃぐちゃ。「千花どこにおった?」なんて廉造の声が聞こえたから逃げようとする。もう廉造のおもちゃはこりごりだから八百造に助けて貰おう。しかしいくら立とうとしても寝起きの身体は言うことを聞いてくれない。頭が重くかくんとなるだけだった。

「千花なら縁側で気持ち良さそうに寝とったよ。頭撫でたら機嫌悪そうに睨まれたわ」
「あー…朝抱きまくらにしてもうたからまだ怒ってるんやな」

 ケラケラと笑う廉造にいらっとした。今日の朝は本当に災難だった。無理矢理廉造のベッドで寝かされたのはまあ許すとしよう。しかし朝方、寒いのか廉造は寝返りを打つと同時にあたしをぎゅっと抱きしめてきた。思わず起きてしまい「やめてよ!」と怒ったけど廉造はまったく起きなくて、結局解放されたのは太陽がぐーんと昇った頃だった。動けないし廉造の顔は近いしもう最悪だった。頬擦りしてきた時はパンチしてやろうかと思ったけど良心が痛んだのでやめた。

「あ、千花。やっぱりここやったんやなー」

 うるさいバカ。あっちにいけ。そういい睨めば柔造ならどっかいってくれるのに廉造には全く効果がない。それどころか「ツンデレかわいいなぁ。ほんま千花は俺の天使や」とわけのわからないことをいってくる。ほんと廉造はあたしのことなんて無視で自分の好き勝手。廉造なんて大嫌い。そう言えば廉造は眉を下げ悲しそうに笑った。

「そない怒らんといてや。謝るさかい堪忍したって?」

 ごめんなー千花、とあたしの頭を撫でる廉造。あたしが頭撫でられるのに弱いって知ってるんでしょ。こんなんで許さないんだから、と思うけど廉造の大きな手は気持ち良くて思わず目をつむってしまう。なんて単純なんだあたし。悔しいけど廉造の手は大好きなんだ。

「お詫びにおやつこうてきたんや!これで機嫌治してくれへん?」

 誰がおやつなんかで、と思ったけど、がさっと廉造が手にしてたのはあたしの大好物のおやつで廉造に飛びついてしまった。


「千花はコレ大好きやもんなー、まぐろのダイスカット!」
「にゃ!にゃーん!」



怪獣ぶった小動物の話











「ほしいやろ?とってみ?ッあイタッ!」
「にゃあ!」
「引っ掻かなくてもええやろ…痛い…」
「廉造が千花に嫌われとる!」
「うっさい!」





110730
主人公は猫ってオチ。
だから主人公の“言った“っていうのは全部「にゃーん」
廉造中学生くらい。
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