彼とは順調だった。電話もメールもよくしたしデートもよくした。お互いのことはしっかり理解してたつもりだし、将来的にはこの人と一緒になってもいいかな、なんて思ったりした。
『分かれよう』
「え…?」
『もうお前とは一緒にいられない』
私はなにかしただろうか。いままで順調で別れを感じさせるようなことはあっただろうか。
「まって! なんで?」
『お前、浮気してるだろ』
「…は?」
……まったく身に覚えがない。基本的に不器用な私がそんなことができるはずがない。なにを勘違いしているの?
『…じゃあな』
携帯からツーツーっと音が聞こえる。浮気? なにそれ。どういうこと。戸惑っているとまた携帯がなった。
「もしもし!?」
彼からだと思い急いで通話ボタンをおす。「うそに決まってるだろ」と笑う彼の声が聞こえることを期待した。
『もしもしー。だーれだ』
「………臨也なによ。今忙しいの」
かかってきたのは臨也からだった。あぁ、今はあなたの声なんて聞きたくないのに。
『なにピリピリしてるのー。あ、もしかして彼氏に振られたりしたわけ?』
「……」
『あっは図星?当たっちゃった。まあそりゃ知ってるよ。なんせ俺が君が浮気してること彼氏に教えたんだがら』
「……え?」
こいつなんていった? 意味がわからない。私がいつ浮気した? なに、いってるの。つまり臨也のせいで私は振られたって?
『もしもしー千花ー? あ、もしかしてショックで固まっちゃった?』
「……どういうことよ! 私がいつ浮気なんてした!?わたし、あなたに何かした!?」
『おー怖い怖い。そんな怒らないでよ。だってさー、千花が誰かと一緒にいるの気に食わなかったんだもん』
「……」
なにもいわず携帯を切った。臨也への怒りと彼氏が私を信じてくれず一方的に別れを告げられたことやその他いろいろな感情混ざ合いどうしていいかわからなかった。涙が頬を伝う。これはなにに大しての涙なのだろうか。とにかく私はその日一日中、子供みたいに声をあげ気が済むまで泣いた。
起きたらもう日が沈んでいた。どうやらあのまま泣き疲れ寝てしまったらしい。最悪な目覚めだ。一生目を覚まさなければよかったのに。とりあえず起きて顔を洗う。鏡に映った自分の顔はひどかった。
「あーあ。目、腫れてるし充血してるねー」
私しかいないはずの部屋に私以外の人間の声が響く。声のした方を振り向くと、今最も会いたくなかった臨也がソファーにくつろいでいた。
「ちょっとここ私のうちなんだけど。鍵ちゃんとしめたはずなんだけど。どうやって入ったの。なんで、いるの」
「千花ちゃんが泣いてると思ったから慰めようと思って来てみたの。でも来たらなまえ泣きつかれて寝てるし。だから勝手に入ったわけさ」
「臨也が泣かせる原因を作ったのになんで慰めるの。臨也ってほんっと自分勝手だよね。ムカつく」
「そんな怒んないでよ」
「帰って」
もう臨也の話なんて聞きたくなかった。
「ひどいなあ。俺は千花を心配してるのに」
「ひとりになりたいの。帰ってよ」
そういった瞬間目の前が真っ暗になった。どうやら私は臨也に抱きしめられてるらしい。ますます意味がわからない。
「…ちょっとなにするの」
「なにって抱きしめてるんじゃん」
「そうじゃなくて…」
私を抱きしめる意味がわからない。臨也の行動はもともと予想できず意味不明だったが、今は本当に意味がわからなかった。
「なんで私と彼を別れさせたの…」
臨也の体温に包まれているとすごく泣きたくなった。ちゃんと理由をききたいのに私の口からでる声は涙声で震えている。
「だからなまえが誰かといるのが気に入らなかったんだって」
「嘘だ」
もしそうだったとしてもなぜ今なのかわからない。だって私と彼はもう3年も付き合っているのだ。だからなぜ今更こんなことしたのかわらかない。
「嘘じゃないよ」
「いい加減にしないと静雄にいいつけるよ」
そういうと臨也は、はぁ、と息を吐いた。
「じゃあ言うけど、」
臨也は目を泳がせ戸惑っているようだ。
「いいからいいなよ」
「あいつ、浮気してたんだよ」
「は?」
……どういうこと。
「ひどいよね〜自分は浮気してたのに千花が浮気したっていったらすぐふっちゃうんだもん。びっくりしたよ。でもまあそんな男と分かれれてよかったんじゃない? 俺様様だね」
ちょっとまって意味がわからない。彼が浮気してたってこと…? それで臨也は私が浮気してるっていって…
「つまり私を彼から分かれさせるためにそんなこといったの…?」
臨也に抱きしめられてるためあまり臨也の顔は見えないけれど臨也のほうをみる。
「そんなんじゃないから。ただ俺は千花たちのがどの程度なのか調べたかっただけだよ。勘違いしないで」
「ツンデレなの?臨也」
「千花、ドタチンたちと付き合いだしてから変なこと覚えてきたよね。やめてそういうの」
臨也はこういってるけど私のためにやったと思っていいっておこう。その方が気持的にもいい。そう思い臨也の背中に手を回した。
「千花今日は素直なんだ」
「人肌恋しいだけよ。くっつけれる人も臨也のせいでいなくなっちゃったし。これくらい役にたってよ」
「ひどいなあ」
臨也はそういいながら笑った。
あなたの嘘は甘い
(不器用?それとも計画通り?私にはわからない)