「もう一緒にいられないの?」

「……ごめんな」


 嘘っていってよっ! 泣いていた女性はそう叫ぶと謝る男性に縋るように抱き着いた。男性と彼女は付き合っていたらしいが他に好きな人ができたらしく彼女と住んでいた家からでていってしまった。床に座り込みでていった男性の背中を見つめ静かに涙を流す女性のシーンでこのドラマは終わる。続く。陳腐なドラマだ。しかし捨てられた女性を演じていた女優さんは演技も上手く綺麗できっとこれから色んな役を演じていくのだろうな。なんてことをぼーっとCMを見て思っているとキッチンからぐつぐつぐつっと鍋が吹き出す音がして私は急いで立ち上がる。


「止めたよ」


 急いで火を止めようとする私の前に臨也が止めてくれたようだ。さっきまでお風呂に入っていたのになんていいタイミングででてくるのだろう。そのまま臨也はソファーに座りリモコン片手に机に置いてあったテレビ欄を見る。


「そんなに面白かったわけ?このドラマ」

「いや、そんなにって感じ」


 時計を見るとお昼を過ぎたくらいで昼ご飯にはギリギリ間に合ったかなと鍋からカレーをよそりご飯の乗ったお皿に盛りつける。私は福神漬が好きなほうだからいっぱいのせるけど臨也はあまり好きじゃないから飾り程度に乗せといた。いやなら退けて食べるだろう。


「できたよ」


 ソファーに向かって声をかけるけど臨也は今度はテレビ欄ではなく仕事のであろう資料と睨めっこしていた。メガネをかけて真剣に資料を読む臨也は普段の雰囲気と違っていて私は嫌だ。夜中中仕事して朝帰ってきて寝てやっと起きたところなのにまた仕事とは、随分仕事熱心なものだ。ご飯くらいしっかり食べてもらいたいものだが忙しいと臨也はこうして食べない時がある。ただでさえ細いのにこれ以上細くなってどうする気だ。


「臨也」

「これ読んだら食べるよ」

「じゃあせめて髪の毛くらい乾かしなよ。風邪ひくよ」

 頭にタオルを被っているくせにまったく髪の毛を乾かそうとしない。ご飯食べない、髪の毛乾かさない、そんなんじゃぶっ倒れるよ。冗談じゃなく。ハァ……と私はため息をついてソファーの後ろにいき臨也の頭に乗っていたタオルで臨也の頭を拭く。綺麗な髪なんだからもっと大事にしなよ。いつかハゲるよ?


「千花、俺の母親みたいだね」


 ……誰が臨也みたいな子供ほしいと思うのよ。反論するのも疲れるので頭を拭いていた手を早めガシガシっと音がしそうな感じで頭を拭いていてやった。ハゲてしまえばいいんだ。


「ごめんごめん」


 さすがに痛がったのか臨也は資料を机に起き私の手を掴み見上げてくる。ざまーみろ。でももうしないから手を離して。
 そう言おうと思ったけどいつもからかわれてるのにムカついたので反撃をしてやろうと、臨也の唇にキスしてやった。ちゅ、っとリップ音が響き私の唇が臨也の唇が離れる。いきなりの私の行動にさすがの臨也もびっくりしたのか目を丸くしていて私は悪戯成功と心の中でほくそ笑んだ。


「確かに俺の母親はこんなこと息子にしないねぇ」

「あんたの唇が悪いのよ。キスしやすい位置にあるのが悪いの」










無味無臭なキス















 さっさとカレー食べなよ。ていうか母親じゃないから。そういいながら、カレー食べる前でよかった。カレー味のキスなんて嫌だと思った。

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