※DVネタが少しあります。
注意してください。










 急な衝撃で目をつぶることすらできなかった。殴られた左頬がジンジンと痛む。涙がでそうで震える瞼をこらえるように目を瞑った。理不尽だこんなことで殴られるなんて。そう思い殴った張本人を睨むように睨む。


「…っ痛いよ、アーサー」

「静かにしてくれ」


 私の方など一度も見ずテレビの画面に釘付けなアーサーは、まるで殴ったことなんてなかったかのように言う。殴った私よりテレビの方が大事なんだね。さっきまではあんなに優しかったのに、急なアーサーの一変にびっくりしすぎて言葉もでない。殴られた痛みがより強くなった気がして私は静かに涙を流した。泣けば少しは気にかけてくれるかな、とアーサーを見るけれどやっぱりアーサーは画面に釘付けで胸が痛む。


「おぉ!! 勝ったぞ!! イングランドが勝ったぞ!!」


 さっきまであんなにイライラしていたのに手放しで喜ぶアーサー。私だってさっきまではしっかり応援してたのに、アーサーのせいで素直に喜べない。


「やったな! って、千花!? な、なんで泣いてるんだっ!?」


 やっと私を見たアーサーは私の頬に伝う涙に驚き目を見開く。今更なの?しかも自分が殴ったくせに、悲しい、痛い、という感情より怒りの方が勝ちそうだ。


「アーサーが殴ったんじゃない。サッカーに夢中なのもいいけれど私に当たらないでよ…」

「えっ!? ご、ごめん! 大丈夫か!?」


 有りのままの出来事をアーサーに伝えるけどやっぱりアーサーは自覚がなかったらしい。本当に理不尽だ。怒る私にアーサーは戸惑いながらそれでいてすまなそうにしながら私の頬に手を伸ばしてきた。


「いたっ!」

「ごめん! 赤くなってる、腫れちゃいそうだ」


 そんなことしたのは誰よ、と言い触られた衝撃で痛みが走ったせいで涙の浮かぶ目でアーサーを睨むと、アーサーはもう一度すまなそうに謝った。


「……ただ謝っただけで許すわけないじゃない」


 そういうとアーサーは自分の顔を私に近づけてきた。なに?と聞くと、殴れというので自分の出せる限りの渾身の力で思いっきり殴ってやった。バチーンッ! といい音が部屋に響く。アーサーは痛そうに頬を押さえた。


「いってー! 普通殴るかっ!?」

「殴れっていったじゃない」

「そうだけど……」


 ぶつくさいうアーサーを無視して冷蔵庫に向かい氷をだして袋にいれ頬にあてる。赤くなり熱を持っている頬には調度よかった。アーサーは何か言いたそうにしてるけど私は知らないふりをする。殴ったくらいじゃ気は晴れないよ。


「まだ怒ってるのか……ごめんって」

「どうすれば許すか教えてあげようか」







1万回の甘いキスをしてくれたら、いいよ














イギリスではワールドカップが始まるとDV率が上がるそうです。みんな白熱しちゃうんですね。
元拍手お礼でした。
(100613)
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