「あら、千花!」

「あぁ、アリス。今日はこっちにきたのね」

「えぇ、ブラッドに本を借りようと思って」


 そう笑うアリスだけど、本を借りる以外の用事もあることを私はしっている。ブラッドと何をしているか、私はしっている。見たわけじゃない、聞いたわけでもないが私は知っていた。アリスの空気が違うのだ。すぐわかった。そして嫉妬した。アリスがいなければ私がブラッドに愛されていた?いいやそれはないだろう。私はただの役持ちで誰からも愛されるよそ者には適わない。


「じゃあ今度お茶会しましょうね、千花!」

「えぇ、もちろん」


 そういいアリスは屋敷の中に入っていった。私は仕事の用事がなければブラッドの部屋には入れないのに。そう気軽にブラッドの部屋をたずねれるアリスをどれだけうらやましいと思ったか。別にアリスのことは嫌いじゃない。むしろ好きなほうだ。しかしブラッドのこととなると私は歪んだ汚い感情でいっぱいいっぱいになってしまう。何度、アリスに向かって銃を放とうとしたことか。しかしそんなことをしたらブラッドに嫌われてしまう。そんな自分勝手な理由で今日もブラッドの部屋へといくアリスを見守った。いっそアリスを打ってしまおうか。打って、ブラッドに嫌われて、殺されてしまえばどんなに楽なのだろうか。私の心は今日もそんな歪んだ感情でいっぱいだ。


「よう、千花。なに泣きそうな顔してるんだよ」


 ぼーっとたっている私の肩を叩いたのはピンク色の髪にかわいらしい耳のついたボリスだった。


「ボリス、」

「また帽子屋さんのことか」


 ボリスはため息を吐きながら問いかけるわけでもなく確認するようにいった。ボリスにもわかってしまうくらい顔にでていたのだろうか。ポーカーフェイスは得意なほうなのに。この国の住人は歪んだ人ばかりだ。私はまだ正常な方、といつも思っていたけれどブラッドのこととなるとまるでアリスのことを思うどこぞの白うさぎさんのように歪んでしまう。彼と私は似ている。そんなこと彼にいったら銃を放たれてしまうのでいわないけれど。


「もうやめちゃえば? 俺にしとけって」

「ちょっと、ボリス!……んっ」

「千花おいしい」

 ボリスは私に抱きつき首を舐めてくる。ボリスの猫らしいザラザラした舌に舐められ背筋がゾクゾクっとなった。抱きしめてくるボリスの力は非力な私でも振りほどけるほど弱い。しかし振りほどかないのは結局私も誰かに求められていたいからだろう。ブラッドに愛されないことをボリスに抱かれてることで満たしている。最初はよかったが体は満たされるだけで結局心は空しいだけだった。ボリスを利用して悪いと思っているけれど、ボリスだってアリスの変わりとまではいかないが私を利用しているんだろう。今のままの関係が私は好きだ。


「死んでしまえばいいのに」

「誰が? アリス? 帽子屋さん? 俺?」


――私よ






愛したのは誰だっけ









タイトルは弱虫モンブラン/DECO*27から引用
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -