なんの変哲のない授業前のHR。やっと夏の暑さが終わり少しずつ涼しくなってきた。この時期は眠くなるなと私はあくびをした。でもよく考えると私は年中あくびしているから別に時期なんて関係ないのかも。眠気には勝てないの。またでたあくびを堪え切れず口に手を当てて隠す。ふと教卓を見るとミナト先生と目があった。見られた。恥ずかしさで頬がほてっていくのがわかった。今すぐにでも突っ伏して顔を隠したいと思ったけれど何故か目をそらせなかった。数秒目があったままだったが先生は反らしてしまった。私は少し残念で胸がきゅうっと閉められたような気がして心拍数が上がった。


「田中くん」

「はい」


先生はまた出席をとりはじめる。静かな教室に響く先生の声が耳に心地好く入ってきて私はまた眠気が襲ってきた。眠いのに先生の声が聞きたくておちてくる瞼を頑張って上げる。


「中村さん」

「はい」


もう少しで私の名前、と思うとまた少し心拍数が上がった。どきどきと波打つ心臓に何出席くらいでこんなに緊張しているんだとバカらしくなる。でも先生が私を見てくれる時はこんな時しかない。先生の特別になりたいのにこんな風に名前が呼ばれるのを待つくらいしかできない自分がひどく情けなくて悔しくて切なかった。
見つめるだけで思いが伝えられたらいいのに。そしたら先生は私をもっと見てくれるかな。でも見るだけで思いが伝わっちゃったら困るかも。今先生に呼ばれている子やミナト先生と仲良く話している姿をみるクシナ先生に私が嫉妬していることも伝わっちゃうかもしれない。ミナト先生を思っている他の女の子たちの気持ちも先生に伝わっちゃうかも。やだ。絶対に嫌。そんな醜い感情を持つ自分が嫌になる。でもそこまで私ミナト先生が好きなんだと思うと少し自分を好きになれる気がした。
ねえ先生。ミナト先生。私先生に聞きたいことがたくさんあるの。好きな人いる?私みちゃった、クシナ先生と仲良く話しているところ。クシナ先生のこと、好きなの?ねえ先生。みんなが先生のことかっこいい思ってるの知ってる?先生モテモテなんだよ?先生は鋭いようで鈍感だから知らないでしょ。だから、私がこんな風に思ってることも知らないでしょう?ねえ先生、年下じゃいけないの?ねえ先生、先生答えて。私もっと聞きたいことがあるの。


「仁科さん」

「……はい」





ねえお願い先生、
名前で呼んでよ










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テーマ「人外ファンタジー」
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